最新記事

対中ビジネス

アップルCEOが初訪中した理由

ジョブズもしなかった中国公式訪問を敢行した目的は何なのか、様々な憶測が飛び交っている

2012年3月28日(水)17時23分
トマス・ミュシャ

「トップ会談」 クックは中国当局者と何を話したかに世界が注目している Robert Galbraith-Reuters

 アップルのティム・クックCEOが、中国を正式に訪問した。先代のスティーブ・ジョブズはやらなかったことだ。

 中国は、アップルにとってどれほど重要な存在なのか。その度合を示す例をいくつか挙げてみよう――。

■アップルにとって、中国はアメリカに次ぐ世界第2の市場である。
■昨年、中国ではアップルのiPadが400万台売れ、iPhone4についても「莫大な」需要があるという。
■中国国内にアップル直営店は5店舗あり(北京に2店舗、上海に2店舗、香港に1店舗)、いずれも好調。
■アップルのサプライチェーンの多くが中国にある。それらの工場で働く人々の労働環境について、同社には厳しい監視の目を向けられている。
■アップルは台湾系企業プロビュー・インターナショナル・ホールディングスの深◯部門から、中国国内におけるiPadの商標権侵害で訴えられている。

 エレクトロニクス製品の市場が世界で最も急速に成長しているのも中国だ。アップルを世界一の人気と世界最大の株式時価総額を誇る企業に押し上げたiPhoneやiPadの市場だ。

 クックの中国訪問の大きな目的は、中国政府の高官たちと会うこと。3月26日には、クックは北京市長の郭金龍(クオ・チンロン)と会談した。

 ブルームバーグによれば、郭はクックに対し、アップルが「さらなる発展を遂げるために、(中国との)協力関係をより深める」ことを望むと語ったという。アップルは中国への投資をさらに拡大させる姿勢を見せているが、広報担当者(北京在勤)はその詳細は明らかにしなかった。

 中国にとってもアップルは重要な存在だ。アップルは多くの中国企業と生産委託契約を結んでおり、それによって雇用の創出や中国経済の成長を促している。ハイテク好きの中国人消費者もアップル製品に夢中だ。

 アップルCEOがわざわざ訪中した理由は、いずれ新聞の見出しを飾ることになるかもしれない。何であれ、業界にも市場にも大きな影響を与えるだろう。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃

ワールド

シリアで米兵ら3人死亡、ISの攻撃か トランプ氏が

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中