最新記事

株式市場

FRBが在米欧州銀の資金繰りを警戒

欧州銀を介して欧州債務危機がアメリカに飛び火すれば、08年金融危機が再燃しかねない

2011年8月19日(金)13時38分
トマス・ミュシャ

既視感 株価下落の連鎖が止まらない(ニューヨーク証券取引所) Brendan McDermid-Reuters

 2008年、リーマン・ショック後の暗黒の日々を覚えているだろうか? 当時は誰もが、世界の金融システムがフリーズしてしまうのではないかと恐れたものだ。
私たちはタイムマシンに乗って、再びあの危険域に近づいているようだ。

 8月18日付けのウォールストリート・ジャーナル紙によれば、ユーロ圏の債務危機の影響で「アメリカで営業している欧州系銀行の資金繰りが苦しくなり、融資などの業務が出来なくなる」可能性があることを、FRB(米連邦準備理事会)が懸念しているという。

 在米の欧州系銀行を監督するニューヨーク連邦準備銀行が、問題を抱える欧州系銀行のアメリカにおける業務への監視を強めている、と同紙は報じている。

 ウォールストリート・ジャーナルのこの必読記事から、主張の一部を紹介しよう。


 ニューヨーク連邦準備銀行は最近、欧州系銀行とたびたび会合を開いている。彼らが資金不足に陥る可能性があるかどうか、判断するためだ。関係者によるとニューヨーク連銀は、これらの銀行がアメリカで日々操業するうえで必要な資金を確実に確保できるかどうかについて、もっと情報を提供するように求めている。アメリカにおける営業の全面見直しを銀行に強いるケースもあるという。

 ニューヨーク連銀は資金繰りに苦しむ欧州系銀行の在米部門の動きを「非常に警戒している」と、連銀との協議に参加した欧州大手銀行の幹部は言う。

 米規制当局は、08年の金融危機の再来を避けようとしている。当時は、信用収縮のため国際的な金融システムの血流が止まるところだった。今回はユーロ圏の債務危機の影響で欧州系銀行の在米部門の資金繰りが苦しくなり、融資などの業務が出来なくなるのではないかと懸念されている。

 ただし問題発生の兆候は少しずつ出ているものの、過去の金融危機ほど重大な事態には陥っていないだ。


アメリカの経済指標も足を引っ張る

 世界的な景気後退への懸念から、アメリカの株式市場は急落している。米雇用や製造業に関する指標が市場予想を下回ったことも、足を引っ張っている。

 8月18日、スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数は5%下がり、ダウ平均は4.4%、ナスダック(米店頭市場)総合指数は5.7%低下している。

「欧州の債務危機に加えて予想を下回る経済指標が、ただでさえ『売り』に傾きやすい市場を刺激している。要するに、今はいいニュースはないということだ」と、米投資顧問会社アランB・ランス&アソシエーツのアラン・ランス社長はニューヨーク・タイムズ紙に語った。「買い手にすれば、信じられるものが何もない状態だ。再び、売り手が相場の主導権を握り始めている」

GlobalPost.com 特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中