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ノルマ果たせ!中国の無謀な省エネ作戦

2010年12月16日(木)16時30分
ダンカン・ヒューイット(上海)

エネルギー騒動で中国政府が学んだこと

 緊急用のディーゼル発電機を使って削減分をまかなおうという工場が大量に出現したため、ガソリンスタンドの前にはディーゼル油を買い求める長い列ができた。悪いことに、ディーゼル発電機は汚染源として危険視されている一般的な発電所より深刻な汚染を招く存在だ。中国メディアもこうした状況を大々的に批判するようになり、英字紙シャンハイデイリーは削減目標を大慌てで達成しようという政府の動きを「緑の茶番劇」と呼んだ。

 この5カ年計画が今年で終わってしまえば、来年からはエネルギー効率が悪化するかもしれない。だがWWFの王は、少なくとも最近の混乱ぶりから中国政府がこの問題を重視していることが分かると言う。来年からの新しい5カ年計画には、新たな削減目標としてさらに18%という数字が盛り込まれると見られている。

 地方政府が最近の混乱ぶりから「すばらしい教訓」を学んだはずだとも王は指摘する。「地方政府は十分に前もって計画を立てる必要があると学習した」。そして「中央政府も最善策を導くうえで、経験不足の地方政府をもっとうまく指導する必要があると分かった」と、王は言う。

 だが、上海のビジネススクール中欧国際工商学院でサステナビリティー(持続可能性)を研究するリチャード・ブルベーカー教授によれば、中国全体の二酸化炭素排出量は今も増加している。ブルベーカーは、中国政府は発電だけではなく工業界と建設業界も規制対象にすべきだと主張。「政府は厳しい決断をしなければならない。アルミニウムのような汚染産業をこれ以上野放しにしないと明言すべきだ」と指摘する。

「断熱材を用いず、過剰に鋼鉄やセメントを使ってマンションを建てるやり方を変えさせる必要がある」ともブルベーカーは言う。中国では、今後15年以内に2億人以上の人々が地方から都市部に移り住むことが予想されている。住宅建築の見直しは一刻を争う問題だ。

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