最新記事

米経済

超訳FRB「米景気はお先真っ暗」

難解な専門用語を平易な表現に置き換えたら、行き当たりばったりの経済政策が浮き彫りに

2010年11月4日(木)17時40分
ジェーコブ・ゴールドスタイン、ジェレミー・シンガー・バイン

大丈夫? バーナンキFRB議長の発言は株式市場や各国政府の政策に大きな影響力をもつ Jim Young-Reuters

 FRB(米連邦準備理事会)のベン・バーナンキ議長は、注目された11月3日の連邦公開市場委員会(FOMC)の後声明を発表し、景気の見通しや今後数カ月間のFRBの対応について説明した。
 
 こうした声明はほぼ6週間おきに出され、株式市場や各国政府の政策に影響を与える。だが、その中身は専門用語のオンパレードで、一般の読者が理解するのはほぼ不可能だ。

 そこでスレート・ドットコムはナショナル・パブリック・ラジオのグローバル経済情報チャネル「プラネットマネー」と協力して、FRBの声明をシンプルな表現に翻訳してみた。中央銀行語の固苦しい表現と、日常的な言葉遣いに言い換えた翻訳版を読み比べてみよう。


■原文 9月のFOMC以降に入手した情報は、生産及び雇用の回復ペースが依然として遅いことを示している。家計支出は徐々に増加しているが、高い失業率と所得の緩やかな伸び、住宅資産の減少、低い信用力によって抑制状態が続いている。(後略)


■翻訳 景気は相変わらず最悪だ。人々は以前よりカネを使うようになっているが、家計は破産寸前。10人に1人は仕事がなく、給料も上がらない。家の値段はがた落ちで、誰もローンを組めない。会社は新しいものを買っているけれど、新しい工場やオフィスビルをつくっているわけではない。誰も人を採用せず、誰も家を建てない。低かったインフレ率は超低い水準になった。


 法令で義務付けられた責務の通り、FOMCは雇用の最大化と物価の安定の推進を目指している。現時点では失業率は上昇している。また長い目で見ると、基調インフレを示す指標は、FOMCの2つの責務と一貫していると判断できる水準に比べて、幾分低い水準にある。(後略)


■翻訳 FRBの主な仕事は2つ。失業率を抑えて、物価を安定させることだ。ご存知のように、今の失業率はとても高い。インフレ率が非常に低いのも心配だ。私たちは失業率は下がるだろうと言い続けているが、相変わらず下がらない。


 より強いペースでの景気回復を促進し、時間の経過とともに、インフレがFOMCの責務と矛盾しない水準になることを確実にするために、本日、証券の保有拡大を決定した。(後略)


■翻訳 景気に渇を入れ、インフレ率をちょっと引き上げるために、買い物三昧を続けることにした。まず、昔の投資の元を取った時点で、新しいものを買い続ける。2つ目(今日のビッグニュースはこれ)に、金欠財政から6000億ドルをひねり出し、今後8カ月間で連邦政府の長期国債を買う。そうすれば利率が下がるから、人々がお金を借りたり使ったり、企業が採用を始めたりしやすくなると期待している。

 ちなみに、これは実験で、実はどう転ぶかわからない。私たちには、いつでも計画を変更できる権利がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米高官、中国レアアース規制を批判 信頼できない供給

ビジネス

AI増強へ400億ドルで企業買収、エヌビディア参画

ワールド

米韓通商協議「最終段階」、10日以内に発表の見通し

ビジネス

日銀が適切な政策進めれば、円はふさわしい水準に=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中