最新記事

テクノロジー

iPadは本当に世界を変えたのか

2010年11月26日(金)15時31分
ジョエル・シェクトマン(ジャーナリスト)

 一方、iPadのアクセサリ市場は既に数百億ドル規模に成長している。

 液晶保護フィルムやケースはiPhoneなどのスマートフォン(高機能携帯電話)用にもあったが、値段の張るiPadは傷つけたくないというユーザーの欲求がもっと大きいと、ZAGG社のロバート・ピーダーセンCEOは言う。

 同社は5年前から電子機器の保護用品を製造してきたが、iPadの発売後は売り上げが大幅に拡大。昨年は3800万ドルだった売り上げが、今年は6500万ドルに達する見通しだ。「わが社にとってiPadはホームランだ」と、ピーダーセンは笑う。

 iPadは今後も新しいバージョンが登場するだろうから、ケースやスタンド、ワイヤレスキーボードなどアクセサリや周辺機器の売り上げもまだまだ伸びる。ウーによると、この分野でのiPadの経済効果は、来年1年間だけで10億ドルに達する可能性がある。

在庫管理やカルテにも

 iPadは在庫管理という、より一般的な面においても画期的な変革をもたらすかもしれない。既に靴小売り大手のペイレス・シューソースは、iPadを使って在庫を調べるシステムづくりを検討していると、市場調査会社フォレスター・リサーチのアナリスト、マイケル・グアルティエリは指摘する。

 その次は医療関係かもしれない。アメリカ全体で医療記録の電子化が進むなか、医者が患者の医療記録にアクセスし処置内容を記録できるアプリが登場する可能性がある。「在庫管理や記録管理が必要な業務用アプリの開発は、何であれ大きなチャンスだ」とウーは言う。

 iPad版ゴールドラッシュが激化すれば、誰でも金脈を見つけられるとは限らない。だが15年までにiPadユーザー人口はあと数千万人は増える。それを考えれば、探る場所はいくらでもありそうだ。

[2010年11月 3日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド、対米対抗関税を提示 WTOに通達

ビジネス

独バイエル、国内農業関連事業を縮小 アジア勢との競

ワールド

米カリフォルニア州知事、自治体にホームレス取り締ま

ワールド

トランプ大統領、13日から中東3カ国歴訪 大規模デ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 10
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中