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投資銀行「おいしい商売」はもう終わり

投資銀行がIPO業務で大儲けしていたのは昔の話。取引高も利幅も減っている。その原因は……中国とTARP?

2010年7月26日(月)17時36分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

巨大IPO 中国農業銀行は7月半ばに香港と上海で株式上場、190億ドルを調達したが(湖北省内の支店) Reuters

 ああ、なんという悲哀だろう。グローバル経済の抗いようのない大波に、アメリカのある種の「労働者」が翻弄されている。

 中国が経済的に台頭したこと、そしてアメリカ経済で政府が果たす役割が拡大したことにより、給料は大幅ダウン。市場の減速と先行き不透明感により、会社のビジネスは縮小している。おまけに、政治的には叩かれ放題だ。

 工場などで働くブルーカラー労働者のこと? いや、そうではない。アメリカの投資銀行員----特に、新株・債券発行の引受業務を専門とする人たちのことだ。

 2010年の4〜6月期は極めて悲惨だった。ゴールドマン・サックスは7月19日、4〜6月期の引受業務の収益を4億4500万ドルと発表した。この数字は前年同期比で58%減だ。

 JPモルガン・チェースの同期の株式発行引受業務の収益は、前年同期比で68%減。シティグループの債券発行引受業務の収益は32%減、株式発行引受業務の収益は30%減だった。

 どうして、こんな事態に陥ってしまったのか。株式・債券の発行ラッシュが1年前とは打って変わって、アメリカの株式・債券発行総額が大幅に落ち込んだのだ。大手通信社のトムソン・ロイターのデータによれば、2010年上半期のアメリカでの株式発行総額は前年同期の約3分の2、債券発行総額は約5分の4にとどまった。投資銀行の引受業務は手数料ビジネス。取引の件数と規模が縮小すれば、収益も当然減る。

中国ビジネスは手数料格安

 ただし、投資銀行の引受部門が苦境に追い込まれた理由はそれだけではない。もっとグローバルな要因も作用している。

 株式・債券の発行業務、とりわけ株式のIPO(新規株式公開)は、投資銀行にとってうま味のあるビジネスだった。IPOを手掛けた投資銀行に入る手数料は、アメリカでは発行価格の6.5〜7%程度が相場らしい(大口割引は一切ない)。

 1億ドルのIPOであれば手数料は650万ドル、10億ドルのIPOであれば6500万ドルということになる。6月末に、ナスダック市場に株式を上場させた電気自動車メーカー、テスラモーターズの場合、目論見書によれば投資銀行の手数料は1株当たり1.105ドル。公募価格は1株17ドルだったので、およそ6.5%という計算だ。

 グローバル経済の勢力図が変わり、事情が変わり始めた。もともとヨーロッパでは手数料の相場がアメリカよりはるかに低かったが、アジアの相場はもっと低い。7月半ばに香港株式市場と上海株式市場に株式を上場させた中国農業銀行(発行総額190億ドル)の場合、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどを含む引受幹事団は「手数料の総額を約2億600万ドルから1億4200万ドルに引き下げることに同意」したと、フィナンシャル・タイムズ紙は伝えている。ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌によると、手数料の総額は株式発行総額の2%に満たないという。

冷え込むアメリカの市場

 言うまでもなく、IPO関連のビジネスで中国の重要性は増すばかりだ。IPO専門の調査会社ルネサンス・キャピタルのデータによると、2010年に入ってこれまでに世界で行われたIPOの件数は222件で、株式の発行総額は1060億ドル。1件当たりの平均発行額は4億7400万ドルという計算だ。

 このうちアメリカ国内で行われたIPOは68件。発行総額は104億ドル、1件当たりの平均発行額は約1億5000万ドルにとどまっている。この金額は世界の総額の10%でしかない。一方、アジア・太平洋地区は、世界の総額の68%を占めている。

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