最新記事

ネット

フェースブックに潜む危険な罠

人気のSNSで、知らないうちに商品やサービスを購入させられる被害が急増中

2010年2月2日(火)16時05分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

毎日数千万人がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェースブックにアクセスし、仮想の農場を経営する「ファームビル」のようなくだらないゲームに時間を費やしている。しかし気を付けてほしい。最近こうしたゲームを楽しむ人々が、意図せず商品やサービスを購入させられ、法外な料金を請求されるケースが急増している。

 被害者はこうした詐欺に「偶然」引っ掛かるのではない。フェースブック用のゲーム開発業者は広告から巨額の収入を得ているが、その一部が詐欺師に利用されているのだ。

 シリコンバレーの人気ブログ「テッククランチ」の筆者マイケル・アリントンは最近、フェースブックが詐欺師から儲けの分け前をもらい、その詐欺を黙認していると主張して騒ぎを起こした。「最終的に悪いのはフェースブックだ」と、アリントンは言う。

 フェースブックはアリントンの指摘を否定している。広報担当のデービッド・スウェーンは、同社は詐欺広告の撲滅に努力しており、既にルールを破った広告会社2社を排除したと主張。「これまでもこれからも、われわれはユーザーに脅威や被害を与える活動の根絶のため積極的に行動していく」と、スウェーンは言う。

 フェースブックはネット上で最もホットなサイトだ。ユーザー数は3億人以上に上り、今年第3四半期だけで5000万人も増えた。マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は9月、予定よりもかなり早く「キャッシュフローが黒字転換した」と発表した。

 フェースブックにこれほど人気が集まったのは、便利で素晴らしいサイトだから。だがその素晴らしさ故、詐欺師にとって格好のターゲットになってしまった。

 詐欺はどのように行われるのか。例えばサンフランシスコにあるジンガ社が開発したファームビルに登録したとする。

サイトの長所を逆手に取った詐欺広告

 毎月6300万人がプレーするこのゲームでユーザーは、オンライン上の畑に種をまいて作物を収穫する。種や土地などを購入するのに必要なポイントは実際にジンガ社に送金して買うことができるし、サイト上に掲載される広告をクリックし、リンク先企業の調査に協力してポイントを稼ぐこともできる。

 試しにその1つ、「IQクイズ」を受けてみよう。結果を受け取るには、携帯電話の番号を打ち込まなければならない。打ち込むと携帯電話に識別番号が送られてくる。ユーザーはそれをサイトに入力するが、実は「番号を打ち込むと月額9・99ドルの星占いサービスに加入します」と細かい文字で書かれている。翌月の携帯電話の請求書を見て、初めてだまされたと気付く──。

 こうした広告をばらまく会社の1つ、オファーパルに本誌が取材を申し込むと、同社の幹部は最初、ビジネスは完全に合法だと主張した。だがその2日後、同社のCEO兼創業者の辞任が発表された。新CEOジョージ・ギャリックは公式声明で「残念ながらオファーパルには誠実とは言い難い広告をばらまいた罪がある」と認め、こうした活動を中止すると誓った。

 ネット上には昔から詐欺広告が存在している。だがフェースブックのユーザーはサイト上で個人情報を明かしているため、とりわけ詐欺師が狡猾な罠を仕掛けやすい。広告にはユーザー自身の名前や友人の名前といった個人情報が盛り込まれているから、免疫のないユーザーは広告をフェースブックからのメッセージだと思い込む。活字にフェースブックと同じフォントや色を使っていることもあるのだから、たちが悪い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中