最新記事

通信

愛用の携帯電話がスパイに変身

盗聴ソフト「スパイフォン」に気を付けろ

2009年7月28日(火)12時49分
ベンジャミン・サザーランド

 しーっ! あなたは携帯電話に盗聴されているかもしれない。

「スパイフォン」というソフトウエアの著しい進歩で、最近ではどんな携帯電話にも簡単に盗聴プログラムを仕掛けられるようになった。値段も安く、特別な技術は必要ない。相手の携帯端末を手に取って、ソフトのダウンロードを許可するキーを押す必要はあるが、作業は数分で完了する。

驚くべきパワーを持つ新世代スパイフォンが出回り始めたのは08年から。最新のソフトなら、離れた場所にある携帯電話を勝手に通信状態にし、周囲の音を盗聴することもできる。盗聴の際の通信記録も一切残らず、持ち主は何も気付かないままだ。

 インターネット上では、200社を超える販売会社がスパイフォンを販売している。価格は50ドル程度から(300ドル以上するものも数種類ある)。

 彼らは頑として売上高を明かそうとしないが、私立探偵やコンピューター、通信関連の専門家は、携帯が盗聴器にされているケースは驚くほど多いとみている。仕掛ける相手は配偶者や恋人、親、同僚などだ。上司の不正を見つけて会社幹部に密告したがっている従業員も多いという。

メールを開くと盗聴器に

 ミラノのアガサ・クリスティー探偵社のマックス・マイエラロ社長は、フランスとドイツでは携帯電話の約3%、ギリシャ、イタリア、ルーマニア、スペインでは約5%が盗聴されていると推定する。

 警備コンサルタンティングの米グラニット・アイランド・グループのスパイフォン専門家ジェームズ・アトキンソンは、アメリカで盗聴されている電話は3%程度だとみる(政府による盗聴を除く)。

 こうした数字が大げさだとしても、他のことでは法を尊重する市民が、通信となると意外に頓着しないことは確かだ。

 iPhoneやブラックベリーなどのスマートフォンは標的にされやすい。処理能力が高いからだ。アメリカでは、以前の規格よりセキュリティーが弱いGSMネットワークの普及が潜在的な犠牲者を増加させた面もある。

 あるイタリアの開発者によると、警察用に開発されているスパイウエアはメールに付着し、受信者がメッセージを開くと自動的にその電話にインストールされる。このソフトもいずれは犯罪者の手に渡ると考えると心配だ。

 スパイウエアの氾濫は、アップルやマイクロソフトなどの大手が外部のアプリケーション開発者向けにシステムを開放して隙ができたせいでもある。セキュリティーソフトは、パソコン用のものでは携帯電話には大き過ぎるし、かといって携帯電話専用ソフトを買うほどユーザーには危機感がない。

 盗聴が拡大し続ければ、その意識も変わるかもしれないが。

[2009年7月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

維新、連立視野に自民と政策協議へ まとまれば高市氏

ワールド

ゼレンスキー氏、オデーサの新市長任命 前市長は国籍

ワールド

ミャンマー総選挙、全国一律実施は困難=軍政トップ

ビジネス

ispace、公募新株式の発行価格468円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中