最新記事

iPhone/iPad新OSでまたひと儲け

アップルの興亡

経営難、追放と復活、iMacとiPad
「最もクールな企業」誕生の秘密

2010.05.31

ニューストピックス

iPhone/iPad新OSでまたひと儲け

「iPhoneOS4」や「iAd」、フラッシュ排除が独り勝ちを生むからくり

2010年5月31日(月)12時00分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

アップルの庭 次世代OSを発表するジョブズ(4月8日) Robert Galbraith-Reuters

 私を含め一部のメディア連中がアップルのiPadに夢中になっているのを見て、「狂っている」と思った人もいるだろう。だが、その後の展開を聞いてほしい。

 アップルは4月8日、iPadとiPhone向けの次世代OS(基本ソフト)「iPhoneOS4」を発表した。これは、まともな人なら大したニュースじゃないことくらい分かるだろう。そもそもOSなんてマニア向けのものだし、この新OSの発売は夏以降になるという。

 それでも記者発表には興奮したブロガーやジャーナリストたちが殺到。記者発表をブログでライブ中継した者さえいた。発表内容がいったい何だったのか、気にしながら2時間も待ってなんかいられないというわけだ。さらに悲しいのは、恐らく多くの人が実際に仕事の手を止めて、そうしたブログを読んだだろうということ。もしもあなたがその1人だったら──どうかあなたに神のご加護がありますように。

 それはさておき、肝心のニュースは、iPhoneOS4がマルチタスク(パソコンのように複数のアプリケーションを同時に起動して同時に作業すること)対応だという点だ。

ハードが格好良すぎてつい言いなりに

 他社の携帯電話のOSは既にマルチタスクに対応しており、アップルは本来なら他社にこれほど後れを取ったことを恥じるべきだ。だがアップルは厚かましくも、こう主張した。自分たちは超が付くほどの完璧主義者で、他社よりはるかに優れたマルチタスク対応機能を開発したかったから時間がかかっただけだと。まさに、市場に出遅れた者が使う常套句だ。

 注目すべきは、アップルが自社の携帯電話のOSをパソコンのOSのようにしようとしていること。ただし、パソコンと違ってiPhoneのOSでは、好きなアプリケーションをダウンロードして使うことができず、すべてアップルから購入しなければならない。

 言い換えれば、アップルが開発しているのは、自分たちが完全にコントロールすることのできる新種のパソコンだ。そして人々は、まんまとアップルのやり方に引っかかっている。ハードウエアがあまりに格好いいからだ。

 アップルはこの日、新しい広告プラットフォーム「iAd」も発表した。iPhoneとiPad上で使われるアプリケーションに広告を組み込み、その広告収入の60%がアプリ開発者に、40%がアップルの懐に入る仕組みだ。アップルは広告の販売・提供・配信をすべて手掛けるという。

 つまりアップルは、自分たちが完全にコントロールできる「塀で囲んだ庭」をつくるだけでは飽き足らず、その庭の中で提供されるすべての広告をも管理しようとしている。スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、自分以外の誰かが許可なしにアップル製品で一銭でも儲けることを許さない、というポリシーを貫いている。

それでもフラッシュをサポートしない理由

 もちろん、ジョブズはそんな態度はおくびにも出さず、いつものようにiAdは社会奉仕活動の一種だと語った。「これはわが社が一獲千金を手にするためのビジネスモデルではない。アプリケーションの開発者が業界で生き抜いていくのを手助けするものだ」

 ニュースはまだある。アップルは依然アドビ・フラッシュをサポートするつもりはないそうだ。理由については何も説明がなかったが、ちょっと考えれば分かる。Huluのようにフラッシュを使用した動画を提供するサイトを使えなくすれば、ユーザーはアップルのiTunesストアからコンテンツを購入せざるを得なくなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中