最新記事

ロシア共産党:『アバター』を禁止せよ

アカデミー賞の見どころ

大ヒット『アバター』作品賞に輝くか
今年のオスカーはここに注目

2010.02.16

ニューストピックス

ロシア共産党:『アバター』を禁止せよ

超大作はロシアの盗作だと上映禁止を求める声が挙がっている
(作品賞、監督賞、美術賞など9部門でノミネート、美術賞など3部門で受賞)

2010年2月16日(火)12時08分

敵か味方か 元海兵隊員ジェイクはアバターとなって森の奥に潜入する ©2009 Twentieth Century Fox

 ジェームズ・キャメロン監督のメガヒットSF超大作『アバター』は、アメリカの海兵隊を悪者扱いしたとして米タカ派を激怒させている。また白人のアメリカ人が先住民族を帝国主義者の略奪から守る物語なんて、恥知らずにも程があるという批判もある。だがこれまでで最もユニークな批判は何といっても、ロシア共産党からのものだろう。

 サンクトペテルブルクのロシア共産党は最近の声明で、このSF大作はバラク・オバマ米大統領のノーベル平和賞受賞を正当化しようとして失敗した、と主張した。失敗した理由は、作品に登場する海兵隊員が誰一人として正義に見えないからだという(彼らに言わせれば海兵隊は、イラクやユーゴスラビア、アフガニスタン、ハイチ、ソマリアでの殺人者で迫害者だ)。

 『アバター』の製作が始まったのは4年前で、もちろんオバマは大統領にもなっていない。

「衛星パンドラの先住民解放運動の闘士が、米国防総省が作り出したミュータントの言い分を信じるなんて片腹痛い」と、同共産党は言う。

「注意深く隠されてはいるが、キャメロンの略奪的な本性はすぐ明らかになる。作品の中ではベネズエラはすでに侵攻されウゴ・チャベス大統領は殺された後。米兵は大挙して太陽系を侵略し、後には焼け野原しか残らない」

「登場人物は、悪者の共和党員(元海兵隊の大佐で入植地の指導者)と正義の民主党員(主人公の元海兵隊員ジェイク・サリーとシガニー・ウィーバー演じる植物学者)に一応分けられた上で、物語は常軌を逸した展開を迎える。正義の味方は、人類ではなく地球外文明のために戦うのだ」

 共産党は声明の最後でこう要求する。「キャメロンがB級ヒット映画を作るためにソ連のSFから盗作していることを認めるまでは、彼のすべての作品の上映を禁じるべきだ」


 サンクトペテルブルク共産党のウェブサイトKPLOは、衛星パンドラは60年代のソ連のSF小説からの剽窃だと主張している。

 ロシア情報サイトのRTによれば、「サンクトペテルブルクとレニングラード地域の共産党は、国内外のあらゆる重要事件に対する奇抜な反応で知られており」、それが映画に及ぶのもこれが初めてではない。2年前には、彼らは「ソ連人民の敵」とねんごろになったウクライナの女優オルガ・キュリレンコを攻撃した。その敵とは、ジェームズ・ボンドだ。

──ジョシュア・キーティング


Reprinted with permission from FP Passport, 13/1/2010.© 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、FRB議長発言で9

ワールド

米、パキスタンと協定締結 石油開発で協力へ=トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中