コラム

オバマからトランプへ、米政治の「退化論」(パックン)

2020年01月17日(金)19時30分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

From Hope to Hate / ©2020 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<汚職とヘイトを重ね続ける、そんな大統領を許せるか? 今の共和党員は口をそろえて答えそう、Yes, we can!>

この10年間でアメリカ政治は退化した。オバマ政権時代を象徴したHope and Change(希望と変化)は今やHate and Corruption(憎しみと汚職)に変貌。ドナルド・トランプ大統領は集会や会見で、またはツイッターを通して堂々と憎しみを発信している。まるでスローガンのようだ。その実例が多過ぎて、枚挙にいとまはない。いや、ある!

さあ、ここからはトランプのワンポイント・ヘイト・イングリッシュ! 大統領が個人攻撃に用いる文句を教えるから、皆さんも大きな声で......繰り返さないでくださいね。まずはDope(バカ)、Dopey(バカ)、Dumb(バカ)、Dummy(バカ)、Fool(バカ)、Low-IQ(バカ)......。ちょっと待って! 「バカ」の種類だけでレッスンが終わりそう。 ほかのテーマに行こう。

お次は、Crazy(狂っている)、Nut job(狂っている)、Weak both mentally and physically(精神的にも身体的にも弱い)......。あっ、これもワンパターンだ。違うのを探そう。Phony(偽物)、 Spoiled brat(甘ったれた悪ガキ)、Low class slob(下層階級の薄汚い奴)。いいね!

いや、よくない。ヘイトだから。

「個人攻撃はヘイトスピーチではない」と指摘する人もいるかもしれない。そのとおりだ。ヘイトスピーチは、ある特徴を持った社会的弱者などに対するもの。例えば、けいれんのまねをして身体障害者をバカにするとか、女性をHorse face(馬面)やDog(犬)とけなすとか、移民をrapists(レイプ犯)やdrug traffickers(麻薬売人)と一緒くたにしたり、獣や寄生虫のように表現したりとか、人権を訴える黒人アスリートをSon of a bitch(雌犬の子)と罵るとか。それならヘイトスピーチに当たる。はい、全部トランプがやっていること。見事な反面教師だね。

Corruptionも堂々と公衆の面前でやる。例えば、ゴルフ絡みのもの。ハフィントン・ポストの試算では、就任2年半でゴルフ旅行の警備費などで税金1億ドル以上を使ったが、ゴルフ場はトランプ所有のリゾートだから公金の一部は彼の財布に。G7サミットを自分のホテルで開催すると発表したのも、それを撤回するときに大統領の座を使ってホテルのPRをしたのも汚職だ。政敵ジョー・バイデン前副大統領を捜査するよう外国政府に働き掛けた「ウクライナ疑惑」も、それが発覚した直後、テレビカメラの前で中国にもバイデンの捜査を呼び掛けたのも汚職。

汚職に汚職を、ヘイトにヘイトを重ね続ける、こんな大統領は許せるか? その問いに、今の共和党員は口をそろえて答えそう。Yes, we can! と。あ~、オバマが恋しい。

【ポイント】
WHAT A DIFFERENCE A DECADE MAKES...
10年でこんなにも変わるものなのか......

<本誌2020年1月21日号掲載>

20200121issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story