コラム

米最高裁判事候補にもセクハラ告発運動「#MeToo」が(パックン)

2018年10月24日(水)16時50分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Kavanaugh Meets #MeToo (c)2018 ROGERS--ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<問題候補を最高裁判事や大統領にする共和党は、失格に値しないのだろうか?>

米最高裁判事候補のブレット・キャバノーが大変なことになった。上院で承認される寸前に、性的暴力の疑惑が複数浮上したのだ。

まず、高校時代にホームパーティーでお酒に酔ったキャバノーに襲われたと、女性の1人が告発した。上院司法委員会は9月27日に公聴会を開き、女性とキャバノーの言い分を聞いてさっさと片付けようとしたが、なかなか片付かなかった。逆に、これをきっかけに次々と疑惑が浮上した。

大学のパーティーで「キャバノーが性器をズボンから出し、私の顔に押し付けた」と告発する女性や、「高校時代に、輪姦が行われたパーティーでキャバノーを見掛けた」という女性も出てきた。90 年代にバーの外でキャバノーが女性を「暴力的に、性的に」壁に押し付けたとつづる匿名の手紙も共和党議員に送られた。判事候補を中心に、プチ#MeToo(セクハラ告発)現象が起きたのだ。

公聴会に呼ばれた女性は最初の1人だけだし、どれも裁判で真否を審査されていない話だ。それでもキャバノー反対派が指摘するとおり、こんなに疑惑の持たれている人を普通は最高裁判事どころか、ベビーシッターにも起用しないはず。

風刺画では「過去の行動から、キャバノーは失格だよね?」と、女性が共和党員に同意を求めているが、そこに割り込む2人の存在自体がその願いが絶望的であることを物語る。

左には現役の最高裁判事クラレンス・トーマス。彼も1991年の承認前に元部下の女性に対するセクハラ疑惑が浮上し公聴会が開かれた。キャバノーの先輩だ。元部下の女性は、トーマスが自分の性器を自慢したり、最近見た獣姦ポルノについてえぐい描写をしたりしたと告発した。風刺画の中の彼はそれを思い出して、また語りたがっているようだ。

右にいるのはドナルド・トランプ大統領。16人の女性からセクハラや性的暴行の告発を受けている、これもキャバノーの先輩だ。2016 年10月に発覚した音声データで「俺はセレブだから女性の性器をつかんでも怒られない」と豪語していた。風刺画では同じ行為をトーマスに勧めているようだ。

つまり先輩2人の例を見れば、「過去の行動で失格になる」ことはまずない。キャバノー候補、ご安心ください。

でも、問題候補を最高裁判事や大統領にする共和党自体の過去の行動はどうだろう? 失格に値しないのだろうか。

【ポイント】
YOUR NAIVETÉ REMINDS ME OF A PORNO I SAW ONCE...

君のうぶな感じは、以前に見たポルノを思い出させるね......

QUICK...GRAB HER BY THE PU**Y!!!
早く......彼女の性器をつかむんだ!!!

<本誌2018年10月16日号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-IMF専務理事「貿易を成長の原動力に」、世界

ビジネス

ウォラーFRB理事、入手可能なデータは雇用低迷示唆

ビジネス

ミランFRB理事、来年の成長は米中緊張の行方次第

ワールド

イスラエルとハマス、合意違反と非難応酬 ラファ検問
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story