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サム・ポトリッキオ Surviving The Trump Era
元上司トランプに挑むヘイリーの米大統領選出馬が「天才的な一手」な訳
ヘイリーはバイデン支持者にとっても恐るべき強敵 BRIDGET BENNETTーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<2月14日、米大統領選に立候補を表明した共和党のニッキー・ヘイリー元国連大使。元上司であるトランプに挑みつつ、たとえ予備選で負けてもトランプVSデサンティスの勝者を決める「キングメーカー」役に?>
ニッキー・ヘイリーは「勝者」のオーラを全身にまとっている。しばしば過小評価されているが、勝利をつかみ取る能力は現実離れしている。予想を裏切る成功の連続には、経験豊富な政治学者も脱帽するしかない。
出身は共和党支持の白人が多数を占め、家父長主義的な気風が色濃く残る南東部サウスカロライナ州。2010年、ヘイリーは同州で女性初というだけでなく、人種的マイノリティーとしても初の州知事に当選。4年後にも順当に再選を果たした。
外交経験は皆無だったが、トランプ前政権では国連大使に抜擢された。「軽量級」と見られていたが、退任時には最も強い印象を残した政権高官との評価を得た。トランプ前大統領がらみのスキャンダルや騒動もほぼ無傷で切り抜けた。
ただし、米史上最大の番狂わせを演じて次期大統領の座を射止めるためには、あらゆる勝者のオーラを総動員する必要がありそうだ。ヘイリーは2月14日、2024年大統領選への出馬を表明した。バイデン現大統領が正式に出馬表明する前の参戦は、有力候補では元上司で政治的後ろ盾でもあるトランプに続き2人目となる。
ヘイリーはバイデン支持者にとって恐るべき強敵だ。不可能を可能にしてきた実績に加え、彼女にはカリスマ性と有権者の共感を呼ぶ個人的ストーリーがある。
典型的な労働者階級の出というバイデンの出自は通常なら選挙で有利に働くが、インド系移民の娘が相手では、その効果も限定的だろう。10代初めから母親の小さなブティックを手伝い始め、今や有力政治家の1人となったヘイリーは、アメリカンドリームの体現者として自身を売り込むはずだ。
トランプに挑みトランプに「貸し」を作る
現時点で最も有力なシナリオは、ヘイリーは共和党大統領候補指名レースの「攪乱要因」になるというもの。好感度とアピール力を武器に、トランプ最大の脅威であるフロリダ州知事のロン・デサンティスから反トランプ票を引き剝がし、元上司の指名獲得に貢献するというのだ。
ある政治関係者は、ヘイリーの出馬宣言は天才的な一手だと私に言った。最悪でもトランプかデサンティスの下で副大統領や国務長官に起用される公算が高いという。たとえ共和党予備選で指名を勝ち取れなくても、一定の票を確保すれば「キングメーカー」になれる。デサンティス対トランプの「リベンジ・マッチ」の勝者を、自分がどちらを支持するかで決められるのだ。
もしこの試合がエスカレートして制御不能になれば(トランプは既に、デサンティスは高校教師時代に10代の少女を誘惑したと非難している)、ホワイトハウス奪還を至上命題とする共和党は白人男2人を切り捨て、大統領選の本選で勝てる最適な候補としてヘイリーに注目するかもしれない。
最新の世論調査では、1対1の直接対決ではデサンティスが45%対41%でトランプを上回るが、ヘイリーが出馬した場合、トランプが38%対35%でデサンティスを逆転。ヘイリーが11%を獲得する。この数字のとおりになれば、トランプはデサンティスの挑戦を阻止した彼女に「借り」ができる。
デサンティスが勝利する場合でも、したたかなヘイリーはおそらく適切なタイミングでデサンティス支持に切り替え、選挙で負けても政治的には勝利するユニークなポジションを手に入れるはずだ。
実際にヘイリーが大統領になる可能性はどれぐらいあるのか──それを推し量る指標の1つは、ライバルからの攻撃だ。やはり次期大統領への意欲をにじませるポンペオ前国務長官が自身の回顧録でヘイリーを猛批判したという事実は、彼女がホワイトハウスの主となる確率が一般に言われているよりもずっと高いことを示している。
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