コラム

トランプが法の裁きを受けずにいられる理由

2022年04月20日(水)15時00分

「 魔法の盾」で法的追及をかわしてトランプは高笑い? JOEL MARTINEZーPOOLーREUTERS

<数々の告発を受けながら有罪にもならず次期大統領選挙の最右翼であり続けられる3つの理由>

ドナルド・トランプ前米大統領にまつわる民事・刑事の疑惑や告発のたぐいは数知れない。

この3月末にも米連邦地裁が昨年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件に関連して法律に違反した可能性を指摘するなど、ホワイトハウスを去って1年以上がたった今も新たな法的疑惑が増え続けている。

浮上している疑惑や告発の数々を見ると、前大統領はそれこそありとあらゆる分野でルールや規範を破っていたと言えそうだ。これまでの法的トラブルは、主として4つの領域に分類できる。

第1は、昨年1月の連邦議会襲撃事件に関与した疑い。バイデン現大統領に敗れた2020年の大統領選の結果確定を妨げ、暴動をあおったと指摘されている。

第2は、脱税、不動産詐欺、大統領職を不正に利用した蓄財などの経済犯罪の疑い。兄の死後に遺産相続権を侵害したとして、姪から裁判を起こされてもいる。

第3は、20年大統領選の開票プロセスに干渉した疑い。トランプは、ジョージア州で選挙結果を覆すのに十分な「票を見つける」よう求めたり、ミシガン州で選挙結果を認定しないよう求めたりする趣旨の電話を自らかけている。

そして第4は、少なくとも20人を超える女性に対する性的暴行の疑いだ(その中には40年以上前のものも含まれる)。このほかにも、トランプの経営する会社での職場における差別、社員への不当な扱い、トランプタワー前のデモへの警備員による暴行などでも訴訟を起こされている。

これらの事件でトランプの仲間たちが次々と起訴されたり服役したりしている。ほとんどの場合は、トランプ自身の関与を示唆する強力な証拠もある。それなのにどうして、トランプはいまだに有罪になることなく、2024年大統領選の最有力候補であり続けているのか。

私が思うに、その理由は3つある。1つは、検察当局者たちの胆力不足だ。これまでトランプは、魔法の盾で守られているかのように法的追及をかわしてきた。

2016年大統領選のロシア介入疑惑を調べていたロバート・ムラー特別検察官による捜査はその典型だ。アメリカでも屈指の高潔で有能な法律家であるムラーは、ロシア疑惑へのトランプの関与を示唆する強力な証拠を大量に見いだしたが、報告書で「大統領が明らかに罪を犯していないという確信があれば、私たちはそう述べる」と記しつつも、最終的に訴追を求めないものとした。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story