コラム

民主党女性議員4人組「スクワッド」とトランプは似たもの同士

2019年08月14日(水)14時30分

(左から)プレスリー、オマル、トレイブ、オカシオコルテスの4人組 ERIN SCOTT-REUTERS

<どちらも全米では「好き」より「嫌い」のほうが多い――トランプの差別ツイートは再選のための作戦か>

トランプ米大統領が7月14日に発した「国に帰れ」という悪意あるツイッターは、4人の女性下院議員に対する正面攻撃だった。トランプは民主党左派のこの4人について、「政府が完全かつ全面的に破綻した国の出身者だ」と、事実と異なる説明をした。

4人の女性はいずれもアメリカ市民であり、3人はアメリカ生まれ。残るイルハン・オマルは12歳でアメリカに移住した。

このツイートは激しい非難を浴び、最終的に下院で非難決議が採択された。実際、法律の教科書に載るような差別行為の典型例だ。まともな民間企業なら、即時解雇だろう。

ニューヨーク14区選出の元バーテンダー、アレクサンドリア・オカシオコルテス(29)。ミネソタ州5区選出の3児の母、イルハン・オマル(36)。マサチューセッツ州7区選出のアヤナ・プレスリー(45)。そしてミシガン州13区選出のラシダ・トレイブ(43)。

「スクワッド」と呼ばれるこの4人組は、なぜトランプをここまで怒らせたのか。彼女たちは政界の常識を破壊する「ゲームチェンジャー」なのか。

スクワッドは多くの点でトランプとよく似ている。どちらも「政治の時代」の一つの象徴だ。トランプと同じく、彼女たちもほとんど一夜にして政界のスターの座に上り詰めた。

4人組を利用する作戦

彼女たちが選挙で獲得した票は、アメリカ人全体から見ればごくわずかだが、メディアへの影響力は相当なものだ。最もいい例がオカシオコルテスだろう。

彼女が民主党の下院予備選で獲得したのは1万6000票足らずだが、ベテランの現職議員を破る大番狂わせだったせいで一気に注目の存在になった。今ではツイッターとインスタグラムのフォロワー数は民主党で断トツの1位。2位以下の大物議員7人の合計より多い。

今はSNSをうまく使える候補者が政治エリートとその体制をたたきつぶせる時代だ。トランプは16年の大統領選で、スクワッドは18年の中間選挙でそれをやってみせた。

今の彼女たちは巨大な影響力を持っている。4人の中で最も知名度が高いオカシオコルテスは、大統領経験者を除けば民主党で最も選挙の際に推薦してもらいたい政治家になった。

誰の推薦が最も価値があるかを有権者に尋ねたところ(上位5人まで複数回答)、1位はオバマ前大統領の70%、2位はビル・クリントン元大統領で28%、3位はカーター元大統領の27%、オカシオコルテスは25%で4位だった(ヒラリー・クリントンは24%で5位、ナンシー・ペロシ下院議長は22%で6位)。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ステフィン・カリー、嘘みたいなロングシュート成功…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story