コラム

ボストン市長選で民主党左派のアジア系女性候補が勝利 今後の米政治への影響は?

2021年11月04日(木)16時40分

ボストン市長選で勝利したミシェル・ウーはコンサル企業で実務も経験している Brian Snyder-REUTERS

<民主党左派がグリーン・エコノミーや格差是正といった政策を大都市でどう実現させるか、その手腕が注目される>

11月2日は11月の第2火曜日ですから、アメリカにとっては「選挙の日」です。今年は、国政選挙のない「谷間」の年ですが、それでも一部の地域で地方選挙があり興味深い結果が出ています。

まず、ニューヨーク市長選では、民主党の中道派であるアダムス候補が共和党のスリワ候補に圧勝しました。このニュースは、すでに事前から圧倒的な優位が伝えられており、政治的には話題になっていません。

話題になったのは、バージニアの州知事選で共和党が勝利したことで、これはトランプ復権だとか、LGBTQへの配慮などが優先される民主党の教育政策が否認されたなどの解説がされています。それが予算を通せないバイデンの苦境に重なって、「2022年の中間選挙では、バイデン氏苦戦か」といった予想も見られます。

ですが、これもそう簡単に見通せる話ではないと思います。というのは、バージニアだけでなく、ニュージャージーでも民主党の現職マーフィー知事が苦戦しているからです。(現時点では僅差のリード)

知事選の争点はコロナ

そのニュージャージーでは教育は大きな争点になっていません。では、どうしてこの2州の知事選で民主党が苦戦しているのかというと、有権者の深層心理としては、やはりコロナ問題が大きいと思います。

学校の対面授業再開に時間がかかったこと、マスクやワクチンの義務化、強力なロックダウンへの反発など、有権者の間には、この1年半の州政に対して、「全体としての強い不満感」が蓄積されていると考えられます。日本で言えば、この夏に菅政権がサンドバッグ状態になったのと同じ心理です。

ということは、反対にこの後、アメリカでのワクチン接種率が改善するなどして、コロナの状況が好転すれば、日本における今回の衆院選のような流れが生まれる可能性は十分にあります。ですから、今回の地方選、とりわけバージニア知事選の結果だけを見て、共和党復権という流れを予想するのは早計だと思います。

今回の地方選で特記すべきは、ボストンという大都市の市長選で、36歳の台湾系女性ミシェル・ウー候補が勝利したことです。若さ、女性、移民2世ということばかりが強調されていますが、ウー候補の勝利が重要なのはその政策です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 6
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 7
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 8
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story