コラム

【2020米大統領選】「隠れトランプ」の行方、「隠れバイデン」の可能性

2020年09月10日(木)16時50分

例えば、現在でもデモ隊と右派の集団が衝突を繰り返しているウィスコンシン州やオレゴン州では、そのような現象があるかもしれません。ですが、暴力を肯定する自分の反社会性を自覚することで、世論調査を偽るというのはかなり特殊な心理です。そのような層はあるとしても、2016年の「恥ずかしいから隠す」とか「投票所で衝動的に入れた」という「隠れトランプ」に比べれば、数的には小さいのではないかと考えられます。

反対に今回、2020年の選挙では、共和党支持者の中に「隠れバイデン」が存在するという考え方もあります。つまり自他ともに認める共和党支持者だが、コロナ禍への対応に幻滅したり、トランプによる軍人や戦没者への侮辱などに嫌気がさして、「こっそりバイデンを支持」している層があるというのです。少し以前ですが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』のジェラルド・F・セイブという編集者がコラムで指摘をしていました。

ですが、共和党の場合はすでに党内にトランプ落選運動の団体『リンカーン・プロジェクト』が立ち上がっており、豊富な資金を集めて、アンチ・トランプのテレビ広告を展開中です。この動きに連動するかのように、共和党の議員のなかでも、選挙区事情から公然と「バイデン支持」を表明するケースは増えています。ですから、バイデン支持を「隠す」という雰囲気はそれほど強くはありません。

ということで、「隠れトランプ」にしても、「隠れバイデン」にしても、各州の選挙結果を左右したり、世論調査の信頼度を損ねるという意味では、前回ほどのサプライズを起こす勢いはない――現時点ではそのように考えられているようです。

<関連記事:戦没者を侮辱するトランプ、その発想をどう理解すれば良いのか?
<関連記事:トランプ支持の強力なパワーの源は、白人を頂点とする米社会の「カースト制度」

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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