コラム

米社会は経済再開へ、混乱回避の試行錯誤が続くニューヨーク

2020年05月19日(火)18時45分

人権派のデブラシオ市長は、地下鉄車内の3300人のホームレスについては施設に収容したと胸を張ったのですが、実際に施設に残ったのは100人程度で、残りはストリートや地下鉄に戻ってしまい、対策は振り出しに戻っています。

その市長は、月末のメモリアルデー連休が迫るなかで、ビーチの開場準備に入りました。ただし、例によって厳格な市長ですから、ビーチ全体をフェンスで囲って、人数がオーバーしたら解散命令を出すし、その際に混乱を避けるために警察力も動員するとしています。また、ビーチをオープンするとしても、「遊泳」は禁止、「パーティー・BBQ」も禁止、実際に許可されるのは「散歩のみ」というのですが、これで市民が納得するのか、そしてクラスター発生は阻止できるのかは、やってみないと分かりません。

ニューヨークの場合は、感染爆発、医療崩壊の責任問題はともかく、ここまで非常に厳しい事態を経験しながら、何とか人心を落ち着かせることができています。これは、バカ正直に正義派を貫く市長と、政治的で老獪な知事が、ケンカしながら絶妙のコンビネーションを見せているからかもしれません。これからニューヨークでは、小売店やレストランの解禁へと進みますが、引き続き様々な試行錯誤が続くと思われます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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