コラム

2025年の大阪万博は1970年の万博とは様変わりする

2018年11月27日(火)18時00分

反対に、アジアの大企業で消費者向けビジネスを大規模に展開している企業はメインのターゲットになるのではないでしょうか? 例えばインドの自動車産業であるとか、中国のエレクトロニクス、金融サービスといった業種は、2025年の段階でもそれなりの予算を持っていて参加してくるかもしれません。その場合も、もちろん英語中心の展示やプレゼンテーションになると考えられます。

さらに、1970年の場合は、あくまでモノの展示や、せいぜいが「ファミレス」とか「ファストフード」といった新しいサービスのデモが主でした。ですが、2025年の場合は、もっとソフト化したイベント、具体的にはビジネスの関連で、人と人がつながるネットワークづくりの場になっていくのではないでしょうか。

その場合は、万博という名のもとに、毎週のように入れ替わりで、様々な業種・産業・分野の「大規模な国際会議」が続いていく、そして個々の国際会議は、キーノート(基調講演)に加えて、中規模や小規模の無数のセッションに分かれ、その多くはパブリックに、つまり万博来訪者には開かれている、そんな格好です。ここでも、公用語はもちろん英語ということになるでしょう。

現在の国際会議というと、業界や専門性のなかに閉じたイベントになっています。ですが、これからの国際会議は、一般市民や消費者も巻き込んで、それこそ環境やプライバシー、持続可能性などを含めた対等で深みのある議論の場が模索されてもいいように思います。

そうした国際会議の企画力、運営力をこの万博でアジアに、そして世界に見せつけることができれば、例えば夢洲に計画されるかもしれないIR(統合型リゾート)も成功するかもしれませんし、大きな意味ではアジアのビジネスや人のネットワークの中心として「商都大阪の復権」の契機になるでしょう。

2025年の万博の企画は、1970年の万博の延長で発想するのを止めるところからのスタートになるでしょう。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ビジネス

英CPI、11月は前年比+3.2%に鈍化 3月以来

ワールド

中国訪日客、11月は3.0%増に伸び大幅鈍化 長官

ビジネス

MUFG、印ノンバンクに40億ドル以上出資へ=関係
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story