コラム

「ぶどう1粒で逮捕」のニュースは、もっと背景の報道を

2018年10月04日(木)15時50分

2点目は、今回逮捕された男性が73歳という高齢であったということです。ということは、認知症の初期症状であるとか、高齢を理由とした「うつ」の症状として、こうした行動に及んだ可能性が否定できません。であるならば、懲罰的な逮捕報道を繰り返しても、この種の事件の抑止にはならないことが懸念されます。

こうした事件では、明らかに小売店は損害を受けますから、野放しにはできません。であるならば、具体的な対策は待った無しの問題だと思います。加齢を原因とした、認知症やうつの症状については、保護と治療を通じた症状の緩和ということが社会的な取り組みとして求められており、ある意味で状況は待った無しだと思われます。

外国人観光客や移民に対して、日本の社会慣行について丁寧に説明する必要があるという問題、そして、加齢に伴う逸脱行動をどう緩和して行くかという問題、たとえ「ぶどう1粒」でも、その意味するところは深刻です。「逮捕」という判断が正しいのか、また起きたことだけを「全国ニュース」で流すだけでいいのか、真剣に考えてみる必要を感じます。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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