コラム

米地方選の民主党勝利は復活の兆しなのか

2017年11月09日(木)16時15分

例えば、ニューヨークのデブラシオ市長は、ヒラリーよりサンダースに近い「党内左派」です。一方で、隣のニュージャージーの新しい知事は、投資銀行家で「党内の中道派」、つまりヒラリーに近いわけです。現在の民主党では、2016年の党大会が「ヒラリー勝利」を前提に運営が歪められていたという問題で、深く静かな党内抗争が起きていますが、この両者が「並び立たない」中では党勢の挽回は難しいのです。

また、バージニアの勝利は確かに画期的ですが、2016年の大統領選でトランプに入れた中道票が「政権に失望して民主党にシフトした」という流れは顕著ではありません。それよりも、2016年にはヒラリーを嫌って棄権した若年層が投票所に来て民主党に入れたという要素の方が大きかったようです。

何よりも、ニューヨーク、ニュージャージー、バージニアというのは、基本的に東北部に属しており、民主党の党勢が元々強いところです。そこで勢いが戻ったからといって、全国レベルでの復活という評価は簡単にはできません。

何よりも、11月5日の日曜日に26人が犠牲になる乱射事件の起きたテキサスでは、「乱射犯を狙撃した」民間人と保安官がヒーローになる中で、「銃があったから惨事がこのレベルで済んだ」という世論が強い状況があります。そんな中で、中西部から南部にかけての大統領への支持は、揺らいでいないと見るべきでしょう。

確かに大統領の支持率は40%を切っており、就任1年の大統領としては史上最低レベルというのは間違いありません。ですが、大統領を支持しない票がこぞって投票所に行くような流れが全国的にできたのかというと、それは全く白紙です。

何よりも、民主党では左派のサンダース派と中道のヒラリー派が和解し連携すること、そして新世代のリーダー、それも左派色やウォール街の匂いが薄い候補が待たれます。できれば草の根の土と油の匂いが似合う一方で、シリコンバレーの描く未来社会への理解もできるような若い世代の候補を中心にまとまることが必要です。そうでなければ、全国的な「分裂」をまとめて現職に対抗するような政治的モメンタムは生まれないからです。

今回の地方選の勝利によって、このような本質的な課題を忘れてしまうようでは、民主党は2020年にホワイトハウスを奪還するどころか、2018年の中間選挙の勝利も難しくなると思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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