コラム

東芝経営危機が象徴する、止まらない日本の技術流出

2017年04月04日(火)15時30分

この3つの要因の中では、やはりもっとも大きいのは3番目、つまりファイナンスの問題だと思います。そのために「稼げる部分」がどんどん流出しているのです。国としての抜本的な構造改革を進めて、こうしたトレンドを止めなくては、やがて技術立国などというのは過去の話になってしまいます。

今回の東芝の問題に戻るのであれば、全電源を喪失しても安全な冷温停止を可能にした「第五世代原子炉AP1000」を有するWHにしても、世界の最先端で64層三次元メモリを製造開始したばかりの東芝の半導体部門についても、そこには優秀な日本の人材が関わっていますし、現在の技術は過去の先人の努力の結晶でもあるのです。

そうした技術が国力を生むどころか、国力が足りないばかりに外国に売りに出されているのです。こうしたトレンドは、どう考えても、そろそろ止めなければなりません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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