コラム

ユナイテッド航空の乗客引きずり降ろし、残る3つの疑問

2017年04月13日(木)17時10分

しかも、経済的に景気が良く、原油価格も安定している今の時期に、逆行するかのようにサービスの改悪を続けているのです。そこには航空業界に「今、儲けなくていつ儲ける」という判断があるのは明白です。そんな経営方針を可能にしているのは、規制緩和よりもメガキャリアの合併という問題です。

先ほど申し上げた「ユナイテッド/コンチネンタル」の合併だけでなく、「デルタ/ノースウェスト」「アメリカン/USエア」という組み合わせを含めて、俗に言うメガキャリアの数は、ここ10年で半減してしまいました。その分だけ競争は緩和され、サービスの改悪も「カルテルのように一社やると他社が追随」という状況があるのです。これが諸悪の根源だと思います。

ではこの事件ですが、まずどのような対応が求められていたのでしょうか。一つは報奨金を法律の上限である1350ドル近辺までオファーして、あくまで任意での降機を募るべきだったということです。

もう一つは、実はこのフライトは286マイル(450キロ強)という短距離だということです。席を譲ったら当日中に着かないからとお互いにカッカしないで、クルーか乗客の何人かを陸路で送れば、はるかに安いコストで丸く収まったのではないでしょうか。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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