コラム

右派と左派の融和に向けた2つの提案

2016年02月12日(金)19時00分

かつては「建国記念の日」に左右対立が顕在化していたが今では日常化してしまった mattjeacock-istock.

 1967年に「建国記念の日」が国民の祝日となって以来、この日には「建国記念の日を祝うイベント」と「建国記念の日に反対するイベント」が行われて、お互いがお互いを非難する、つまり日本社会の「左右対立」が顕在化する日になりました。図らずも日本の「国のかたち」というものが、様々な対立や共存から成り立ち、その「ゴッタ煮の旨味と苦味」の中にあることを象徴しているようです。

 ですが、最近はこの日に関する賛成と反対の声はあまり話題にならなくなりました。祝日として定着したとか、建国神話を非科学的だと頭ごなしに否定すると「偉そうに見えて反発を買う」ので「反対派が自粛している」のかとも思えば、どうもそうではないようです。

 日本の左右対立というのが365日いつでも可能、つまり日常化しているのです。ネットという便利なものがあるので、集会をしたり、印刷物を配ったりしなくても、好きなだけ対立ができるようになったからだと思います。つまり、あえてこの日にお互いに喧嘩を売らなくても良くなったのです。

 言いたいことが好きなときに言えるというのは、それ自体は悪いことではありませんし、国論が別れて牽制し合うのは健全なことだと思います。ですが、対立が時に罵倒合戦になったり、建設的な政策論争を妨害するようになったりするのは困ります。

【参考記事】日本の経済政策は、なぜ右派と左派でねじれているのか?

 そこで、左右対立に関して少しだけ工夫して「対立を緩和する」ことはできないか、2点提案したいと思います。

 1つ目は「立憲主義」についてです。近代の国家観としては、主権は人々の側にあり、政治権力は間接選挙などで政府に委任されるという考えが主流です。ですから憲法というのは、政府に対する権力委任のルールであって、特に権力の制限をするのが機能であるわけです。明治憲法の制定目的も同様でした。

 問題は、憲法とか国家について、直感的に違う感覚を持つ人がいるということです。つまり、憲法は社会の秩序維持を目的とした規範であって、必ずしも国家権力の制限が目的ではないという考え方です。

 開発独裁的な政府がそのような考え方に傾くのは分からなくもありません。ですが、最近の日本では、一部の人々の間に、民意によって委任された権力に対して憲法の名で制限をするのは民意への軽視である、というようなロジックと直感があるようです。そのために、憲法イコール権力の制限という憲法観に違和感を持つのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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