コラム

ヒラリー対ジェブ、2人のビデオを比べてみると

2015年06月16日(火)12時30分

 具体的には「シングルマザーの人生の再出発」「レストランを起業するヒスパニックの人びと」「子育て期間を終えて再就職する女性の再出発」「初めての子供を迎えるアフリカ系の夫婦のドキドキ」「大学を卒業した後で就職活動中のアジア系の学生」「夏に結婚する予定のゲイ・カップル」といったものです。

 要するに、2008年以来の不況で人々が苦しんでいる、その「再スタート」を応援する、そしてその「再スタート」というのが、2008年のオバマとの対決に敗北した彼女の「再チャレンジ」と重なるという演出でした。

 ヒラリー候補本人はビデオの前半には出てきません。登場するのは最後だけで、何とも「大政治家」風に出てくるのです。そして「私も再出発」だとして出馬を宣言、そして「これから遊説に出ます。皆さんの支持をいただくためです」とストレートに支持を訴えていました。

 ビデオの作りとしては、あくまでイメージが中心です。俳優を使って「創作したフィクションのイメージビデオ」という印象が強く、あくまで出馬宣言の「勢いをつける」ためのビデオという印象です。

 一方のジェブ陣営のものは、6月14日に配信を開始した "Making a Difference" というビデオです。まず、内容はヒラリーの "Getting Started" を相当に意識し、また研究し尽くした感じがあって、よく似ています。

ジェブのプロモーションビデオ "Making a Difference"

 ジェブ陣営のビデオの登場人物は4名で、それぞれが「家族全員が高校中退である中、自分は初めて卒業し大学にも行けたというアフリカ系女性」「ごみ収集の仕事からスタートしてコツコツとキャリアを積み上げたヒスパニック男性」「重度の障がいを持った少女の母親」「家庭内暴力に苦しむ女性たちを支援している専門家」であり、実名を名乗っているところから見ると、どれも本物のようです。

 この4名はいずれもフロリダ州の住民で、要するに「ジェブ候補が知事の時代に行った政策に助けられた」ということを説明するために登場するわけです。また、ビデオの最初からジェブ氏自身が登場して、自分の知事時代の実績や、政策に関する姿勢を淡々と述べるのです。その意味では、非常に「わざとらしい」のですが、内容をよく聞くと共和党の政治家にしては「キメ細かく格差是正」をやっているという印象を与えます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性

ワールド

トランプ氏、8月8日までのウクライナ和平合意望む 

ワールド

米、パレスチナ自治政府高官らに制裁 ビザ発給制限へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story