コラム

米大統領選、共和党の立候補ラッシュは「乱立」?

2015年05月07日(木)11時27分

 立候補宣言が一巡したら、今度は予備選前からどんどんお互いの論戦が始まります。やがてTV討論になっていくわけですが、ここではお互いに政策論争だけでなく、中傷合戦など泥仕合的なものも出てきます。ですが、それも盛り上がりの一つであり、話題性が出てくれば党の選挙運動全体の勢いになるのです。

 ちなみに、この時点まで各候補は必死になって運動資金を集めてプールします。そして、12月末からの予備選・党員集会へ向けての選挙戦本番(投票は年明け以降)になると、TVでのCMを投入して激しい戦いに突入していきます。以降は、支持率が取れればカネが集まり、反対に負けが込むとカネも細ってきて順次「退場」になっていくというシステムです。

 そんなわけで、この「予備選までまだ7カ月」という現段階では、各候補共にどんどん「レースに飛び込んで行く時期」ということになります。

 実は、この「大統領選レース」に多くの政治家が飛び込んでいくのには、もう一つ理由があります。それは「最後の1人」になれなくても「副大統領候補」になるという可能性です。

 例えば今回の共和党の予備選では、ジェブ・ブッシュ氏が軸になることが考えられます。その場合、保守系の候補たちとしては、もちろんこれからの序盤戦では「ジェブ氏は真正保守ではない」ということで価値観論争を挑んでいくでしょう。ですが、仮にジェブ氏という中道派が逃げ切った場合には、今度は「共和党の保守票を棄権させない」ために「ランニング・メイト(=一緒に選挙戦を走る副大統領候補)」は「保守派が指名される」という可能性があるわけで、その期待感があるのは否定できません。

 例えば、同じブッシュ家の過去の大統領たちは、例えば父親のジョージ・H・W・ブッシュの場合は宗教保守派のダン・クエールを、そして兄のジョージ・W・ブッシュの場合は軍事タカ派のディック・チェイニーをそれぞれ副大統領候補に指名しています。二度あることは三度あるというわけで、例えば今回名乗りを上げたハッカビー氏などには、そうした計算はあるでしょう。

 また元HP会長のカーリー・フィオリーナ氏や、アフリカ系の医師であるベン・カーソン氏といった候補についても、それぞれ女性票や有色人種票を獲得するパワーを買われて、最終的には「副大統領候補」に指名される可能性があるわけです。

 いずれにしても、現在の共和党に大統領候補が「ひしめいている」状況は、党としてヒラリーとの対決に「ヤル気満々」ということだと思います。これは、「乱立」というニュアンスとは程遠いと言えるでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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