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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
中間選挙の足音
今は2009年の8月になろうという時期で、前回のアメリカ総選挙(大統領選と議会選挙)の余韻が残っている感じがします。まだまだ大統領も議会も「新しい」、そんな感覚です。ですが、実際の政治日程からすると、次の国政選挙、つまり2010年の中間選挙までは1年と3カ月に迫っているのです。そして、この2010年の中間選挙はオバマ大統領にとって、そしてアメリカ政治の全体にとって非常に重要なのです。
何といっても上院の動向が大事です。アメリカの上院は定数100で、現在は民主党が58、民主党系の無所属が2、共和党が40ということで、民主党側が60の絶対多数を確保しています。絶対多数というのは、重要法案について賛否が真っ二つに割れたときに、少数政党が審議拒否(フィルバスター)で法案を廃案に追い込もうとしたときに、それを押し切ることができるパワーのことで、現在は民主党側がそのパワーを持っているのです。
さて、任期6年の上院をどうやって改選しているのかというと、この100人の定員を、憲法制定時に33、33,34の三組に分割して、それぞれ「クラス1(当初任期2年)」、「クラス2(当初任期4年)」、「クラス3(当初任期6年)」として、以降は二年ごとに100人の3分の1を改選して現在に至っているのです。
来る2010年の選挙は、この点で大きな例外となっています。まず通常の改選議席が「クラス3」の組のために34議席あります。これに加えて、バイデン副大統領とヒラリー・クリントンの持っていた議席(現在はそれぞれ暫定的に任期2年で同一会派の議員が指名されている)も改選されます。ということは36議席が改選ということで、これは珍しい現象です。
しかもこの36の中身を見ると民主=共和が18議席ずつを占めて拮抗しているのです。注目は共和党の18議席です。この18という数字はこの「クラス3」では共和党としては大勝に属します。何といっても前回の2004年の大統領選との「同時選挙」の際に、ブッシュの勢いに乗って獲得したのがこの「18」という数字です。いわば小泉チルドレンのように、共和党は新人議員を多く抱えているのです。
しかも新人以外のベテラン共和党議員は6名が2010年には引退を表明しており、次回の36議席を争う中で共和党現職は12だけ、残りは新人ということになるのです。そして現職の12も一部には苦戦が伝えられています。ですが、仮に次回改選の36で共和党が半数の18を取れないということになると、民主党は絶対多数の60から更に議席を伸ばしてしまいます。仮に前回の2008年総選挙に起きたような「共和党から民主党へ8議席が移動」というようなことになると、上院の勢力地図は「68=32」という極端なことになります。
そうなると政治的なバランスが崩れるだけでなく、2年ごとに3分の1改選という上院では共和党が勢力を奪還するのは大変なことになります。では、そうした「オバマの民主党の天下泰平」がほぼ確実な情勢になっているのかというと、私は決してそうではないと思っています。景気回復に遅れが出ている中、例えば健保改革や外交などで大きな失敗をしてしまうと、世論の目は一気に厳しくなります。そんな中で、大統領のパワーを牽制するために世論は上院の共和党に勝たせるような選択をしてくるかもしれません。共和党現職はそんなに強くないのですが、民主党の暫定議席や現職を切り崩すことは決して不可能ではないからです。
現時点での大統領の人気、共和党のリーダーシップの崩壊状態からみると、そうした可能性は実は低いと見るのが正しいのでしょう。ですが、1年と少しに迫った中間選挙というのがオバマ政権にじわじわとプレッシャーをかけつつあるのは事実だと思います。その意味で、アメリカの憲法における、大統領と議会のバランス、そして選挙システムは機能しているということができると思います。日本では「ねじれ解消」の議論の中で「一院制」などという議論がありますが、単純に「ねじれ」がなければ良いというものではありません。政権に必要なチェックをかけることができ、しかも全体の決定スピードは確保できるシステムというのは、そんなに簡単なものではないと思います。
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