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【写真特集】絶滅危惧種が織りなす人間模様
DISAPPEARING ACTS
Photographs by TIM FLACH

<孤独な樹上人>ゴールデンモンキーのたてがみはファッションではなく中国中央部の厳しい寒さから身を守るためのもの。だが本当の「敵」は人間で、密猟や森林伐採により残された個体数は150だけとも
<動物たちがファインダー越しに見せる表情の中に、彼らを取り巻く環境の変化を読み取ることができる>
動物写真家のティム・フラッチが2年を費やして写真集『Endangered(絶滅危機)』を制作する道のりは、まさに冒険尽くしだった。ゴリラを探しに西アフリカ・ガボンに入り、ホッキョクグマを撮るために流氷の上に立った。ケニアでは、雄として最後の1頭だったキタシロサイに出合った。そのサイも今年3月に死亡が確認され、絶滅に近づいた。
絶滅危惧種の数を正確に把握することは難しいが、世界自然保護基金(WWF)によればその数は少なくとも毎年1万種に及ぶ。原因のほとんどが人間がらみで、狩猟、人口増加、都市化、そして魚介類の乱獲だ。
そんな人間に対するフラッチ流の警告は、動物たちが見せる人間的な表情を捉えること。12年に刊行した『More Than Human』では沈痛な面持ちのパンダなど、タイトルどおり「人間以上に人間らしい」彼らの表情を収めることに成功し、今回もその手法を用いて同じ感動を生み出した。
写真集には、ロードハウナナフシやセンザンコウなどなじみの薄い昆虫や動物も含まれている。愛くるしいパンダに目が奪われがちだが、ポリネシアマイマイと呼ばれるカタツムリも関心を払うに値する存在だ。
フラッチは人間界に目を向けることで動物たちの心を知るインスピレーションを得る。中南米のアマゾンに生息するフタイロタマリンの前かがみでしわを寄せ、白いたてがみに覆われた姿はまるで映画『スター・ウォーズ』に登場するヨーダだとフラッチは言う。「人が映像を見るときには、必ずある種の印象を伴う。動物たちがファインダー越しに見せる表情の中に、彼らを取り巻く環境の変化を読み取ることはとても重要だ」
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