コラム

世界が前澤友作に注目するのは、バツグンに「面白いお金持ち」だから

2020年01月28日(火)16時20分

2018年に外国特派員協会で宇宙旅行について会見した前澤 TORU HANAI-REUTERS

<お年玉ばらまき企画から月周回旅行のパートナー探しまで、桁違いのカネのかけかたがもれなく話題に>

世界が前澤友作(ゆうさく)に注目している。最近、BBCやCNN、ニューヨーク・タイムズなどがこぞって彼を記事にした。

お金持ちだからではない。前澤さんの資産額は10億ドル以上だが、そんなビリオネアは世界に2604人もいる。ドイツには資産額が4億ドル超の犬、グンター4世がいて、歌手マドンナから750万ドルの家を買ったこともあるという。マドンナはかつて750万ドルの犬小屋に住んでいた、とも言えるけど。

前澤さんが注目されるのは「面白いお金持ち」だからだ。まずアートコレクターとして話題になった。2016年に約62億円のバスキアの絵を含め、オークションで90億円近い「大人買い」をした。2017年にもまたオークションでバスキアの絵画を史上最高額の約123億円で購入。当然注目度が高まった。オークションでバスキアを売りたい人の間では。

昨年1月には、前澤さんの投稿が世界新記録となる430万回以上リツイートされたことも報じられた。ツイッター大統領ことドナルド・トランプの昨年の最高記録は約20万回。人気ラッパーを取り上げたときだ。前澤さんはそんなズルい手に頼らず、リツイートした人の中から100人に100万円ずつ配ると約束しただけ。他人の人気に便乗しない。福沢諭吉以外は。

しかし、大ブレイクは今年1月。2023年の宇宙旅行に「人生のパートナー」を連れて行くという、推定750億円のハネムーンを懸けたお見合い企画を発表したときだ。

「世界の平和を願っている」20歳以上の独身女性を募集し、今年3月末までに相手を決める一部始終がAbemaTVで放送される。世界の目を引き付けるのは当然だ。現に、そっくりの米リアリティー番組『お金持ちと結婚したい人は?』(2000年)は高視聴率を記録している(結ばれた2人がすぐに結婚の無効宣言をしたことは、縁起が悪いからここには書かない)。

#MeTooの時代に?

前澤さんは昔から世界のセンスに合わせている気がする。例えば、ミュージシャンとしての芸名はYOU X SUCK(ユーサック)。直訳すると「あなたはしゃぶる」だが、意味としては「おまえ、下手くそ」だ。ライブで「You suck!(ユー・サック)」と客席から叫ばれたとき、やじられているのか、応援されているのか分からない。実に面白い。

もちろん、誰もが彼を評価するわけではない。他の超お金持ちが社会貢献に取り組むのと違い、彼は自分の興味を満たしてばかりと批判されそう。ビル・ゲイツが感染症撲滅に励む一方、前澤さんは自家用ジェットの内装をエルメスで装飾する。また、はしゃぎ方が少年っぽくて、スペースXの創立者イーロン・マスクみたいに「ピーターパン症候群」と言われるだろう。ピーターパンも人気だけどね。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

米FRB、インフレリスクなく「短期的に」利下げ可能

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 9
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story