コラム

オリンピックの終焉──裸足の王者アベベはもういない

2021年08月07日(土)20時03分

実際、そういう感覚が選手たちにも、応援するわれわれにも出てきている。

柔道の井上康生の成功のひとつの要因は、選手たちに国を背負うな、自分のために戦えと叩き込んだことにある。

私たちも、卓球であれば、やはり、中国の選手たちの異次元のプレイに感嘆するし、賞賛を惜しまない。

自分の国だけを応援し、盛り上がる、村同士の対抗のお祭りの時代はとっくに終わったのだ。

ビジネスとなり、プロスポーツが前提となった、個人間でも国の間でも不公平なオリンピックの意義はなくなったし、国ごとが戦うという虚構も、虚構ですら邪魔になったのだ。

だから、オリンピックは東京2020を最後に終焉を迎え、消えていくのである。

少なくとも、意義があり、私たちが素直に感動できるオリンピックは、コロナがあろうがなかろうが、もはや存在しないのである。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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