コラム

消費刺激は不要、それどころか社会に危機をもたらす

2020年03月31日(火)14時55分

しかし、カネに困っている人もいる。世論調査では、家計収入が心配という回答が一番多かった。雇用の不安よりも多かった。これはよいニュースだ。米国では失業保険申請者数が1週間で一気に300万人を超えた。15倍になった。日本では、フリーランスの心配はあるが、少なくとも雇用されている人々への危機はまだ本格的に及んでいない。

収入の減少は、残業手当が減ったことだとすると、もともと残業に依存していたのが問題で、残業前提で給与を払っていたその企業が問題だ。非正規雇用(という名前も使いたくないが、今は置いておいて)の所得減少、首切りが問題だ。

要は、消費者は全く困っていない。働き手は不安を抱えている。中小企業の雇用主側もそうだ。経営が心配だ。資金繰りが心配だ。したがって、消費者への支援はゼロにして、生産者側、働き手側に100%支援を集中すべきだ。

医療関係者、介護福祉施設関係者への手当てはもっとしていいはずだ。この議論をしている暇がないのか、なにか分からないが、彼ら、彼女たちの奮闘に政府として、国として報いる必要がある。

失業補償は手厚く

したがって、資金繰り倒産しないように、無担保無利子融資、返済期限長期(あるいは無期限)で中小企業に融資をし、それをになう金融機関を徹底的に支援すべきだ。

カネを借りるのは無理だ、タダでくれ、贈与しないと駄目だ、という議論が優勢だ。しかし、残念ながら、それは断念せざるを得ない。やはりタダでカネを配るわけにはいかない。ビジネスをして、雇用を支えているから企業は守られるべきであって、そういう企業であれば、このコロナショックの乗り切れれば、黒字となり、時間をかければ、一時のショックによる損失を回復できるはずだ。そうでない企業は、きびしいようだが、たたむしかない。その場合の、失業補償は通常よりも手厚くおこなったら良い。

失業者は徹底的に手当てする。通常よりも割り増しでも良いし、適用される基準を緩和してもよい。非正規で失業保険に加入していなかった場合などにも、失業保険に準ずる手当てを給付する。ここが一番重要なところで、ここは至急今回限りのルールを作り、次回以降の危機に備えて制度を整備しておくべきだ。これで非正規雇用、フリーランスをなんとか手当てする。どうしても不十分にはなるだろうが、できることは最大限する。

そして、国民全員にカネを配るのではなく、健康保険を払えない人に対してもちろんそれを免除する。これは免除していいはずだ。年金については、準免除で、支払猶予と給付での調整をすることになるかもしれないが、できる範囲で免除する。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story