コラム

消費刺激は不要、それどころか社会に危機をもたらす

2020年03月31日(火)14時55分

これが最重要であり、現金給付するカネがあるのであれば、これらを徹底的にするべきだ。

しかし、それでも景気対策が重要だと、市場関係者、エコノミスト、学者までもがいう。V字回復のためには、勢いをつけることが重要で、コロナショックが収束したら直ちに、一気に勢いをつけた回復をして景気をV字に回復させ、倒産を防ぐ、というが、それは嘘だ。

回復してくれば、そのステージで倒産する企業はない。倒産を防止するのは今で、V字回復の軌道ではない。それはマクロの経済成長率の数字合わせに過ぎない。また今回の危機でダメージに耐えうる強い企業だけを救うのでなければならない。

さらに、コロナショックが収束すれば、これまで我慢していた需要が出てくる。したがって、何もしなくても、V字回復は激しく起こる。とりわけ消費については起こる。だから、景気回復のための、V字回復のための景気刺激策、消費対策はいらない。

リーマン超えは絶対にない

リーマン・ショック以上の危機だ、という。嘘だ。あり得ない。IMFや米国投資銀行がそういっている、というが、彼らの話をきちんと聞けば、4-6月期の瞬間風速では、リーマン・ショックをはるかに超える落ち込みとなるが、7-9月期にはV字回復すると言っている。ゴールドマンサックスもモルガンスタンレーも4-6月期のGDPは25~30%マイナスになるが、7-9月期はそれと同じくらいプラスになる、つまり、20%以上GDPは増加するといっている。

リーマン・ショック以上の危機であることはあり得ない。リーマン・ショックは投資したものがゴミになってしまった。銀行がつぶれてしまった。ストックが、資産が失われたのであり、回復するには、それを取り戻すことからはじめないといけない。コロナショックは、この危機を短期で乗り切れば、その後は何も失われていない。すぐに需要は回復し、生産は回復するのだ。

そんな短期で収束しない、というのであれば、ニューヨークの外出禁止が1年も2年も続くかもしれない、というのであれば、それはまさに危機であり、消費者に消費刺激でカネを配っているような余裕はない。無駄遣いせず、必要なものをみんなで大切につかうために資源を取っておかねばならない。失業者を、倒産企業をピンポイントで徹底的に守るための財源が必要だ。病院、医療従事者を支える財源も多額に必要だ。それほどの危機ならますます消費刺激、景気刺激などという余裕はない。

したがって、どのようなシナリオを想定するにせよ、消費刺激、景気刺激の経済対策は100%いらない。100%間違っているのである。

【参考記事】新型コロナショック対策:消費税減税も現金給付も100%間違いだ
【参考記事】世界恐慌は絶対に来ない

cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、カリフォルニア州で販売停止命令 執行は9

ワールド

カナダ、北極圏2カ所に領事館開設へ プレゼンス強化

ワールド

香港トップが習主席と会談、民主派メディア創業者の判

ワールド

今年のシンガポール成長予想、4.1%に上方修正=中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story