コラム

リフレ派、消費税反対派、MMT理論を支持するのはなぜ同じ人たちなのか?

2019年07月22日(月)16時40分

将来世代のお金まで使ってしまう乱痴気騒ぎ gyro-iStock.

<いずれもアベノミクスと同じ目先の人気取り政策だから。いずれ大きなつけを払うことになる>

なぜ、リフレ派、消費税反対派、MMT理論を支持するのはなぜ同じ人たちなのか?

ポピュリズムだからだ。

もう少し詳しく言えば、現在のコストをすべて先送りにして、今支持を集めようとする政策という共通点があるからだ。

これはアベノミクスの特徴で、今できるだけ楽をして、コストはすべて先送り、という政策だ。

だから、アベノミクス支持者はリフレ派で、消費税反対で、MMT理論なのだ。

リフレ派とは、とにかく闇雲に金融緩和をするというのが要点で、実際に物価が上がるかどうかは実はどうでもいい。少なくともリフレ政策と称してやっていることは中央銀行が国債と株式を買いまくるということに過ぎない。しかも、インフレは起きていないし、起きていなくてもアベノミクスは成功ということになっているから、インフレが起きるかどうかはどうでもよいのだ。ポイントは、税負担をせずに国債を大量に発行し、それを中央銀行が買い上げることで、超低金利により資産バブルを作ることにより、景気もよくするという政策だ。バブルが崩壊するまでは、直接的に観察できるコストは生じない。目先の景気もよくなる。ただ、バブルが崩壊した後は大きなつけを払うことになり何もよいことはない。これがリーマンショック、1980年代の日本のバブルの教訓だ。

MMTも先送りの理論

次に、消費税引き上げ先送りは、負担の単なる先送りで、何も説明は要らない。今の有権者には受けるが、消費税を後に引き上げられたときの人々は非常に税負担が大きくなる。それだけのことだ。

MMT理論も、ポピュリズムに過ぎない。自国通貨建てなら名目的には通貨を発行し続けられるので形式的に破綻はしない、インフレが起きるまでは財政赤字を気にしなくてよい、という2点の主張が取り上げられており、反対する側はインフレが必ず起こる、そのとき大変なことになると批判し、インフレが起きたら止めればよい、日本ではインフレが起きなくて困っているのにインフレの心配をするのは早すぎる、という反論が行われている、というのが概要であろう。

この論争は、現在の財政赤字による財政支出のメリットと、将来のインフレリスクのデメリット(インフレの確率とそれが起きたときのダメージ)のバランスでどちらが大きいかを議論するべきだが、数値的にはまったく検証できない(具体的にどのような財政支出政策をどの程度採るかや、金融市場の状況によるので議論されないできた)ので、決着がついていない、ということだろう。

ただひとつはっきりしているのは、メリットは今でコストは将来、ということで、現在世代と将来世代のトレードオフに依存している、つまり、将来世代のリスク負担により現在世代がメリットを受けるという政策で、先送りそのものの政策だ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏が対中追加関税を表明、身構える米小売業者

ワールド

米中首脳、予定通り会談方針 対立激化も事務レベル協

ビジネス

英消費支出、9月は4カ月ぶりの低い伸び 予算案前に

ワールド

ガザ情勢、人質解放と停戦実現を心から歓迎=林官房長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story