コラム

株価はいつ暴落するのか

2017年07月25日(火)16時45分

トランプ政権誕生による日本のミニバブルは終わった(写真は1月23日) Toru Hanai-REUTERS

<日本の株価は割高だが、暴落は当面ない。核戦争級の驚きでもなければスパイラル的な売りはない。なぜか>

今の株価は高すぎる。特に米国は、かなりの収益増加が長期に継続しないと説明できない水準にある。日本の株価も同様に割高だ。ここでいう割高というのは、1株当り利益で見て、株価がその何倍か、といういわゆるPER(price to earning ratio)で見て、ということである。これが20倍を遥かに超え、米国では歴史的高水準、日本でもバブル期を除けば、非常に高い水準である。

しかし、それでも株価が暴落することは当面ないと思われる。

なぜか。

それは、現在の株価がバブルではなくなってきているからである。

日本の株価に限って議論してみよう。

2012年末、アベノミクスの登場とともに、正確に言えば、日本銀行がリフレ政策を採る、ということを期待して、株価はバブルになった。それ以来、2015年頃までバブルは続いたが、2016年年頭からの(2015年末からの)急落で、2016年4月以降、バブルは終わった。

【参考記事】「日本に移民は不要、人口減少を恐れるな」水野和夫教授

その後、トランプ政権誕生で、米国はトランプラリーとなり、米国の株式バブルが日本にも伝染し、ミニバブルとなったが、2017年4月以降、バブルは落ち着き、ミニバブルは終了した。

株価が高いからバブル、ではない

この議論に対して、すべての読者は違和感があるだろう。現在は、日経平均は2万円を超えている(今日は割っているが)。2012年末は日経平均1万円をやっと超えただけではなかったか。1万円割れの時期もあった。それがバブルで、今がバブルでない、とはどういうことか。

【参考記事】政府債務はどこまで将来世代の負担なのか

答えは簡単で、バブルとは、株価が高いからバブルではないのである。株価水準は関係ないのだ。

この答えに対しては、もっと違和感があるだろう。違和感どころか、間違い、戯言だと怒るか、呆れるか、されるだけだろう。

確かに、経済学の教科書的な定義、あるいは世間的に流布している一般のイメージは、バブルとは、株価がバブっている、という表現に見られるように、異常に高いことを意味すると思われている。もう少し正確な定義をすると、「ファンダメンタルズからは合理的に説明できない価格水準が継続している状態」というのが、もっとも一般的で穏当な定義であり、もう少し現実に近い、本質を捉えた定義は、「ファンダメンタルズからは合理的に説明できない、持続不可能なほど高い価格水準が継続している状態」、というものだ。

【参考記事】ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン

後者の定義が「正しい」のに使われないのは、論理矛盾だからだ。持続不可能な状態が持続している、という文字通りの矛盾がある。だから、バブルの実態を知らない、あるいは関心がない人々は、表面的に齟齬が生じない前者の定義を選ぶのだ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポーランド鉄道爆破、前例のない破壊行為 首相が非難

ビジネス

ユーロ圏の経済成長率見通し、今年1.3%に上方修正

ワールド

フィリピンの大規模な反汚職デモが2日目に、政府の説

ビジネス

野村HD、「調査の事実ない」 インド債券部門巡る報
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story