日本人学校バス襲撃 死亡した中国人女性を「美談」として語ることの危うさ
死者に投影される私たちの"願望"
刃物を持った男に自発的に立ち向かったのであれ、結果的に立ち向かわざるを得なかったのであれ、あるいは無抵抗のまま突然刺されたのであれ、一人の女性が理不尽に殺害されたことに変わりはない。それは美談でも英雄譚でもなく、中国社会の暗部によってもたらされた悲惨な出来事である。
その背景には、中国経済の悪化や社会への絶望感のほか、"日本人学校なら襲っても良いだろう"といった反日感情、中国社会を覆う反日ムードのようなものもあったかもしれない。
今後、もしも容疑者が「日本人を狙っていた」、「犯行を阻止された覚えはない」といった供述をしたとしても、それらが報じられることは決してないだろう。「偶発的な事件」、「身を挺して阻止した」と発表している以上、自国にとって不利益になるような情報を進んで出すとは思えないからだ。
中国側の発表は、本当かもしれないし、本当ではないかもしれない。でも、それらを確かめる方法は基本的にない。それが中国と付き合うということなのだろう。
事件や事故で人が亡くなると、私たちはしばしば"できればこうであって欲しい"という理想や願望を犠牲者に投影してしまう。胡友平さんに対してもそういう行いしていないか、自問したい。それこそが、正しい弔い方ではないだろうか。

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