コラム

ひろゆき氏の炎上「辺野古ツイート」に見る冷笑主義にも称賛できる点はある

2022年10月12日(水)09時32分
ひろゆき

辺野古新基地建設工事に反対する人たち(2021年10月)Issei Kato-Reuters

<沖縄・辺野古新基地前の抗議活動を揶揄するツイートが炎上したひろゆき氏。確かに「辞書通り」に解釈すれば座り込みではないかもしれないが、彼の冷笑主義はむしろ格好悪い......でも、今回の炎上には実は称賛できる点もあったのかもしれない>

先日のひろゆき氏の辺野古ツイート騒動が、思いのほか尾を引いている。簡単に経緯を振り返ると、ひろゆき氏は3日、基地移設問題で抗議運動をしている沖縄・辺野古の現地を訪れ、自身のツイッターで「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」と投稿した。

ツイートには「新基地断念まで座り込み抗議 不屈 3011日」との看板の横でピースサインをするひろゆき氏の写真も添えられていた。座り込みと言っているけれど誰も座り込みなんかしていないじゃないかと、抗議運動をしている人々の主張に疑問を投げかけたわけである。

ツイートが注目された発端は、反対運動をしている人々が使っている「座り込み」という言葉の解釈について、ひろゆき氏と抗議者たちの間でズレがあったことだ。

抗議者たちは朝から晩まで座り込んでいるわけではなく、工事のトラックが出入りする9時、12時、15時の1日に3回、各15分程度のみ座り込んでいるという。後日、アベマプライムで放送された映像を見ると、確かにその時間帯は抗議者たちが工事を妨害するように路上に座り込み、機動隊に強制排除されていた。

ひろゆき氏は「辞書通りに解釈すれば、『3011日座り込み』は事実ではない」と主張。一方、抗議者側は「これも座り込みと言える」と反論していた。

辞書には、こう書かれている。

「座り込む:①どっかりと座る ②その場に座ったまま動かない。また、抗議・争議の戦術として特定の場所に座り続ける。(大辞林 第三版)」

辞書を確認した上で判断すると、「座り込みは事実ではない」とのひろゆき氏の主張は"微妙"といったところではないだろうか。24時間、あるいは早朝から日没までずっと継続して座っているほうが「座り込み」として明確なのは確かである。ただし、トラックが往来する時間帯を狙って"座り込んで"抗議をしているのは事実なわけで、それを毎日続けているなら、「3011日座り込み」との表現が間違っているとも言い切れない。

すべて言葉には「狭義」と「広義」がある。狭義で捉えれば「座り込みとは言えない」のかもしれないが、広義で捉えれば「座り込みと言える」。こうした現象について「座り込みの定義とは?」などと言い合っていても、議論は永久に平行線のままだろう。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

特別リポート:トランプ氏の「報復」、少なくとも47

ビジネス

欧州委、SHEINへの圧力を強化 パリ裁判所の審理

ワールド

米大統領が中国挑発しないよう助言との事実ない=日米

ビジネス

中国万科、社債が約50%急落 償還延期要請
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story