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シリーズ日本再発見

世界49カ国・地域にまで広まった「文化を超える」公文式

2016年07月13日(水)16時22分
西山 亨

 指導者間の情報共有についてもKUMONらしい特色がある。会社からのサポートに加えて、横の連携にも力を入れている点だ。一般的にフランチャイズ制のオーナー同士は競合となることが多いが、KUMONの場合は、ひとりでも多くの子どもたちに伸びてもらいたいため、世界中の事例が共有される仕組みにしている。

「日本でも海外でもノウハウは共通ですし、教材についても算数・数学は設問の言語以外ほとんど同じ。従って、例えば、子どもたちがつまずきやすい問題についての情報を共有することも簡単なのです」と広報担当者。言語教材に関しては文化や宗教などの違いによって題材やイラストが変わることはあるものの、教材開発の根幹の考え方は変わらない。だからこそ、海外での展開もスムーズに進んだといえるだろう。

 教材が世界共通でシンプルであれば、真似されやすいとも考えられるが、教材を単にコピーすればKUMONが成り立つわけではない。その理由を聞いてみた。

「指導者は、子どもの学力だけでなく、その日の体調や学校生活の状況など(例えば、明日この子は遠足だからきっと疲れてくるだろうなど)も考えながら、手渡す教材を、一人ひとり、毎回考えます。教室の利益追求だけ求めていたら、そんな面倒なことはなかなかできるものではないと思います。子どもたち一人ひとりをしっかりと観て大事に伸ばすという考えこそ、KUMONが最も大切にしていることなのです」

 子どものことを考えた細やかなサービスの提供――。そう考えると、これまでに世界で称賛されてきた日本人の"おもてなしの心"に通じる点があるのではないだろうか。KUMONに日本らしさは、ないようで、実はあるのかもしれない。

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南アフリカでの学習風景。アフリカでは南アフリカ、ケニア、ザンビア、ナミビア、ボツワナの5カ国で展開(写真提供:公文教育研究会)


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