最新記事
シリーズ日本再発見

「戦争は、暮らしの隣にあった」...沖縄戦を経験した3人の少女が語る「戦後80年目/昭和100年の記憶」とは?

2025年10月10日(金)09時25分
宮武実知子(主婦)

さまざまな人と話すうち、とりわけ若くして戦争を体験した女性たちの話は豊かだと思うようになった。戦時は、戦闘を担う男性と銃後の女性の間には、はっきりと意識や役割の違いがある。

だが、当時の若い女性には、にわかに社会的な役割と責任が増えたことで、上の世代とも子供たちとも違う特有の意気込みがあったようだ。と同時に、衣食住をめぐる心配など暮らしの実感があり、感情を表現する言葉も備えている。

この本は、10代後半で沖縄戦を経験した3人の少女たちの物語である。


 

いずれも勇気と才覚があって、大人の入口に立ったばかりだった。ただ最善を尽くして責務を果たそうとし、それぞれ戦争に直面し、大切な人を失い、悲しみや後悔とともに、それでも逞しく戦後を生きてきた。

文字どおり一所懸命に生きた純粋さと、静かな諦念、淡々と笑って話す強さと美しさに心を打たれた。これまであまり取材されることがなかった類の話である。今だから話せることかもしれない。

そんな長い昔語りを、生活の場に上がり込み、一緒にお茶を飲んだり、世間話をして笑い合ったり、時には雑用を手伝ったりしながら聞かせてもらった。

親しみとともに手渡された物語は、メディアが活字や映像で残す証言や記録、いわゆる「戦争の実相」とはずいぶん違う。彼女たちの小さな声を、今この時期に、なんとか文字に留めておきたいと思った。


宮武実知子(みやたけ・みちこ)
1972年京都市生まれ。2003年京都大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程・指導認定退学。日本学術振興会特別研究員(国際日本文化研究センター)、同志社大学・関西大学などの非常勤講師を経て、2008年沖縄へ移住し、現在は主婦。夫は沖縄県護国神社の宮司を務める。訳書に『英霊──世界大戦の記憶の再構築』(ジョージ・L・モッセ著、ちくま学芸文庫、2022年)。分担執筆「沖縄文化」(筒井清忠編『昭和史講義【戦後文化篇】(上)』ちくま新書、2022年)、新潮ウェブ連載「チャーリーさんのタコスの味──ある沖縄史」などがある。


41I2bRlOs-L._SY445_SX342_ControlCacheEqualizer-160.png

 『はるかな島の声 沖縄戦と3人の少女の長い旅
  宮武実知子[著]
  千倉書房[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ニューズウィーク日本版 日本人が知らない AI金融の最前線
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月3号(2月25日発売)は「日本人が知らない AI金融の最前線」特集。フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに[PLUS]広がるAIエージェント

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

サムスン、「ギャラクシーS26」を発表 主要市場で

ワールド

北朝鮮軍事パレード、金正恩氏娘が出席

ワールド

米政権、ミネソタ州向けメディケイド資金を一部停止 

ワールド

北朝鮮の金総書記、核兵器の増強表明 軍事パレードで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違憲とした「単純な理由」
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 6
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中