最新記事
シリーズ日本再発見

藤原道長の「権力」の源泉は、彼を取り巻く女性たちの力にあった...「後ろ盾」「身分」「生まれ年」の意味とは?

2024年03月02日(土)08時45分
本郷和人(東京大学史料編纂所教授)

p31zuhan-20240221-550.jpg

『平安最強の貴族・藤原道長と源氏物語の謎』(宝島社)31頁より


彰子の存在が、道長がのちに絶大な権力を手にするために重要な役割を果たしたことは、述べた通りである。

倫子はその後、長男でのちの関白である頼通、三条天皇の皇后となる姸子(けんし)、次男・教通、後一条天皇の皇后となる威子(いし)、敦良親王(のちの後朱雀天皇)に入内する嬉子(きし)を、相次いで産んだ。

 
 

このように倫子の娘たちは、いずれも天皇・皇太子に入内し、また彼女の産んだ男子が、道長の後継者となった。

対して、明子もまた道長との間に6人の子をもうけている。ただ、男子の初叙の位からその後の昇進、女子の結婚相手の身分においては、倫子との間に生まれた子供たちと明確な差があった。それゆえ、あくまでも倫子が正妻であり、明子はその次に位置する二番目の妻と考えられる。

さて、正式な婚姻関係にあった倫子・明子の他に、道長は平安貴族のご多分に漏れず、多くの愛人がいたとされる。藤原為光の娘である儼子(たけこ)と穠子(じょうし)は、姉妹で道長の愛人であったと考えられる。

儼子は花山上皇の寵愛を受けた女性で、上皇の崩御後には、道長の娘・姸子の女房となった。『大鏡』では道長の子を懐妊したとされているが、それが事実かどうか、また実際に出産にまで至ったのかどうかは定かではない。

また、妹の穠子については、『小右記』に道長の子を懐妊していることが記されている。妊娠18カ月を過ぎても出産に至らなかったことを考えると、想像妊娠の類であったと見られる。

また『尊卑分脈』からは、道長との間に男子を産んだ源重光娘との関係が窺い知れる。


本郷和人(Kazuto Hongo)
1960年、東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。東京大学・同大学院で石井進氏、五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ。史料編纂所で『大日本史料』第五編の編纂を担当。


syoeimichinaga-20240221.jpg


 『平安最強の貴族・藤原道長と源氏物語の謎
  本郷和人[著]
  宝島社[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国製造業PMI、3月は50.4 需要回復で1年ぶ

ワールド

韓国大統領、エネルギー危機で緊急財政措置も 再生エ

ワールド

「直ちに行動抑制」は混乱生む=石油需給で萩生田自民

ワールド

越境データ関税猶予延長、米が有志国と模索 WTOで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 10
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中