コラム

中国出身テロリストがシリア軍幹部に抜擢──それでも各国が黙認する理由

2025年05月26日(月)17時45分

それは「外国にテロ攻撃をしない」という暗黙のメッセージといえる。アメリカがアフガニスタンのタリバンと最終的に和平合意した一因は、「アフガニスタンを外国攻撃の拠点にしない」とタリバンが確約したことにあった。

米国の安全保障、欧州の難民

ただし各国の「物分かりのよさ」は、これだけが理由ではない。むしろ各国はそれぞれシリアと良好な関係を築きたい立場にある。


たとえばアメリカは、安全保障上の理由からシリアを取り込みたい。

アサド政権時代、シリアはイランと良好な関係にあった。一方、アメリカは1979年からイランを「テロ支援国家」に指定してきた。

ところでイランはレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」を支援していて、シリアはそのための武器流通拠点でもあった。ヒズボラはイスラエルと敵対している。

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つまり、アサド政権を倒してヒズボラやイランと対立するシリア暫定政権との関係は、アメリカにとって「敵の敵は味方」の論理から重視せざるを得ない。

次にヨーロッパの場合、最大の焦点は難民問題だ。

シリア内戦の激化によって発生したシリア難民は600万人以上におよび、ヨーロッパ各国も2014年以降受け入れてきた。しかし、シリア難民の急増はヨーロッパで反移民の気運をそれまでになく高め、極右が台頭する一因にもなった。

そのためヨーロッパ各国は昨年12月、ダマスカス陥落の直後、まだ治安回復が確定していないなかでシリア難民帰還を後押しし始めた。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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