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アングル:インド、酷暑で電力・水インフラに負荷 需要急増で「試練」の夏

2026年04月05日(日)06時59分

写真は猛暑の中、タンクに水をためる作業員。2024年5月、ニューデリーで撮影。REUTERS/Priyanshu Singh

Bhasker Tripathi

[ニ‌ューデリー 27日 トムソン・ロイター財団] - インド‌では今年、猛暑日が増えて電力・水供給システムへの負荷​が高まることが予想されている。酷暑がインフラの「ストレステスト」と化しそうだ。

インド気象局(IMD)は、国内⁠の多くの地域で今年の夏は例年より​も猛暑日が増えると警告している。

政策シンクタンク「エネルギー・環境・水会議(CEEW)」は、気温上昇が既に冷房用の電力需要を急増させ、都市部の水供給にも負荷がかかっていると指摘した。

石油の約90%、ガスの約60%を輸入に頼るインドは、折しも中東紛争の影響でエネルギー確保に苦慮している。

<ピーク時⁠の電力需要>

インドで観測史上最も暑い年となった2024年、電力需要は5月に約250ギガワット(GW)とピークに達し、全国各地で停電が発生した。25年のピーク需要はそれより約4%少なく、6月上旬⁠には約240GWだっ​た。

研究者らによると、世界は今年、観測史上5番目に暖かい2月を経験しており、今年のインドの電力需要は既に予測を上回っている。

国際エネルギー機関(IEA)によると、インドのピーク時の電力需要に占める冷房の割合は既に約20%に達している。CEEWのシニア・プログラム長、ディシャ・アグラワル氏は、異常な高温により今夏のピーク電力需要は約260GWに達する可能性があると予想した。

これは多くの中規模国家の全発電容量を上回る規模⁠だ。インドの発電容量は約500GWで、約半分を太陽光、風力、水力、原子力‌など非化石燃料の電源が占める。しかし太陽光や風力は発電が断続的である一方、石炭火力発⁠電所⁠は運転し続けているため、非化石燃料による実際の発電量は全体の約4分の1にとどまっている。

ガス火力発電は全発電量の約2%に過ぎないが、ピーク時や熱波の際のガス電力使用量は約8GWに達する。地政学的な不安が高まる中で夏のピーク需要を満たすため、インド政府は石炭火力発電所に対してフル稼働とメンテナンスの延期を‌指示する一方、日中の需要には再生可能エネルギーを充てる計画を立ててい​る。

<クリーンエ‌ネルギー>

研究者らはインドの⁠電力システムの課題として、再生可能エ​ネルギーの不安定さ、限られた蓄電容量、老朽化した送電網を挙げ、極端な暑さがさらにインフラを圧迫する恐れを指摘する。

アグラワル氏は「インドの電力需要増加に対し、手ごろなコストで確実に応えるためにはクリーンエネルギーの迅速な拡大が不可欠だ」とし、電力需要が予測を上回り続ければ2030年までに非化石燃料の発電容量を約600GWに‌拡大する必要があるかもしれないと述べた。

一方、極端な暑さは水供給システムも圧迫しており、特に真水の供給が限られている都市部への負荷が大きい。

中央汚染​管理委員会によると、インドは現在、発生する下⁠水の約28%しか処理しておらず、ほとんどの都市で処理水を工業、農業、その他の非飲用目的で再利用する仕組みが整っていない。

CEEWのフェロー、ニティン・バッシ氏は、投資と政策改革の後押しがあれば、2047年までに年​間310億立方メートル以上の処理下水を再利用できる可能性があるとみる。これはデリーの年間水消費量の約30倍に相当する。

複数の州や都市で気温上昇と水の需要増加に備える取り組みが開始している。デリー当局は夏季アクションプランの一環として、給水車、監視システム、緊急水センターを拡充した。

ロイター
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