コラム

中国出身テロリストがシリア軍幹部に抜擢──それでも各国が黙認する理由

2025年05月26日(月)17時45分

とすると、たとえアル・シャラの「脱過激派」が表面的なものだとしても、ヨーロッパ各国にとってシリア難民帰還を加速させるには暫定政権との良好な関係が不可欠といえる。

一帯一路の拠点

そして最後に、中国にとっておそらく最も重要なのはシリアの立地条件だ。


中東、ヨーロッパ、アフリカの繋ぎ目に当たるシリアは、中国の進める「一帯一路」でも重要な場所にある。

アジア、中東方面から地中海にぬけるルートで大きな物流拠点の一つがイスラエルのハイファだが、この地域ではイスラエル軍とヒズボラの衝突がしばしば発生していて、安全保障リスクが高くなっている。

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そのためアジアとヨーロッパを結ぶ交易において、シリア西部のラタキア、タルトゥースなどの港湾都市の重要度はこれまでより高まっている。中国がこれを重視するなら、ザヒードなどウイグル過激派の問題を多少大目にみても不思議ではない。

このように各国がそれぞれの事情からシリアとの関係を重視せざるを得ないなか、暫定政権はそれを利用して国際的な立場を確立しつつある。とすると、仏紙ル・モンドが5月20日、「アル・シャラが外交的ギャンブルで勝利を収めつつある」と評したのは、まんざら誇張とはいえない。

その現実的、実利的対応を考えると、シリア暫定政権は単なる過激派の寄り合い世帯から脱皮しつつあるといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース エキスパートからの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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