コラム

世界に混乱をもたらす「トランプ関税」をロシアが免れたワケ

2025年04月09日(水)15時45分

足元をみられるトランプ

トランプは大統領選の最中から、バイデン前政権による巨額のウクライナ支援を批判して、戦争を自分なら「1日で終わらせられる」と豪語してきた。

しかし、頭ごしのロシアとの協議がウクライナからの反感を招いただけでなく、当のロシアからも「戦争の根本的原因の解決にならない」と拒否された。


ロシアはウクライナにクリミア半島の編入を認めること、周辺一帯から部隊を引き上げること、NATO加盟を2度と申請しないことなどを求めていて、トランプ政権の停戦案がこれらを満たしていないというのだ。

それでも大統領選で大見得を切った手前、トランプはロシアを交渉に向かわせざるを得ないが、ロシアに圧力を加える手段は実はほとんどない。

アメリカはすでに数多くの制裁をしており、これ以上の余地は乏しい。ロシアのGDP成長率は昨年4.1%を記録するなど、制裁のダメージが当初の想定より小さいからなおさらだ。

そのうえ「交渉しないならウクライナ支援を増やすぞ」という脅しも効きにくい。ウクライナを置いてけぼりにした交渉を進めた結果、トランプとゼレンスキーの関係は極度に悪化しているからだ。

こうしたなかトランプ政権はウクライナ製品に対する関税も10%引き上げた一方、ロシアは関税引き上げを免れた。言い換えるとトランプはプーチンに足元を見られたといえる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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