コラム

反政府軍の中核、HTS指導者が言う「全シリア人」には誰が含まれている? アサド政権崩壊を単純に祝福できない理由

2024年12月10日(火)21時40分

HTSはトルコが支援するSNAと連携している。つまり、クルド人勢力とは相容れない。

だからHTSのアル・ジュラニが「全シリア人のシリア」を強調する時、そこにクルド人が含まれるかにも疑問が残る。むしろ、実権を握ったHTSやSNAがクルド人を「シリア人」にカウントせず、北東部への圧力をこれまで以上に強めても不思議ではない。


一方、IS対策を重視する欧米がクルド人勢力支援を強化した場合、ただでさえ難しいHTSやSNAとの連携はさらに困難になる。

その場合、シリアにはアメリカともロシアとも距離を置くイスラーム主義者の政権ができる可能性すらある。とすると、ダマスカス陥落を手放しで喜ぶわけにはいかないのである。

※当記事はYahoo!ニュース エキスパートからの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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