コラム

井戸水に頼る人々や売春婦──外出制限を守れない貧困層がアフリカで新型コロナを拡散する

2020年03月25日(水)13時54分

社会全体が高度にシステム化された先進国では、人々はそれに慣れ親しんでいて、想定外のイレギュラーで全体がダウンしたときに対応に苦慮する。「コロナ疲れ」や「コロナうつ」はその表れだろう。

これに対して、ジンバブエのようにそもそも政府がまともに機能しないところでは、人々はむしろそれに慣れていて、政府を当てにせず生き残りを図る。医療問題にも詳しいジンバブエのカーステイン・ノコ弁護士は「アフリカで自宅待機はほとんどの人が実践できない特権だ」と断じているが、その状況ではコロナはもはや二次的な問題でしかないだろう。

ただし、その状況はコロナ感染をさらに拡大させかねない。ジンバブエでは3月24日、新型コロナによる死者が初めて確認されたが、今後たとえ自宅待機が要請されても、生きるのに必死の人々がそれに従うかは疑問だ。

貧困はコロナ蔓延を促す触媒であると同時に、コロナ蔓延で最も影響を受けるのは貧困層といえるのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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