コラム

「必然だった」日経平均の最高値更新...なぜ出遅れたか、米国・日本の経済の今後は?

2025年08月14日(木)17時50分

パウエルFRB議長のレームダック化が進んでいる

パウエルFRB議長は利下げ再開に慎重な姿勢を変えていないが、8月初旬に判明した雇用統計での労働市場の失速で、筆者が想定していたとおりにFRBが9月に利下げを再開する可能性がさらに高まった。さらに、トランプ大統領が次期FRB議長候補の選定を進める中で、2名のメンバーが利下げを主張し、パウエル体制のレームダック化が進んでいる。

こうした中、8月12日に発表された7月分の消費者物価指数(CPI)はコアベースで前月比+0.3%と、事前予想どおりの結果となった。

関税引き上げの影響で、家具、自動車など一部の品目の価格は上昇しているが、基調的なインフレは2%台で抑制されており、FRBの利下げを後押しする結果と判断される。FRBに利下げを要求するトランプ大統領らの見立てが正しいことが示され、米国株は12日には一段高となった。

先述の通り、7月まで米国株の動きに出遅れていた日本株が、8月から米国株に追随して上昇している。

その一つの要因は、7月末の金融政策決定会合後に植田和男日銀総裁が利上げに慎重な考えを会見で示したことである。最悪の事態は回避されても、トランプ政権の関税引き上げが当面、日本の経済成長とインフレを押し下げる方向に働く。これが現在の日銀のメインシナリオだが、そうであれば利上げを見送るのは当然だろう。

春先まで「1%の政策金利に向けて利上げを継続する」ことに異様に前のめりだった日銀は、トランプ関税という外的環境の変化によって「我に返った」ように見える。時期尚早な日銀の利上げ継続のリスクが低下したことが、株式市場に好感されている。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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