コラム

続編(とキャメロン監督)はダメでも、僕は『アバター』が好き

2023年11月21日(火)21時24分

言い訳と説明で字数を使ってしまった。今回取り上げる『アバター』はつい数年前まで、「一番好きな映画は?」と質問されたときに、ほぼ必ず名前を挙げていた作品だ。

太古の地球を思わせる惑星パンドラで自然と一体化しながら暮らしてきた先住民族ナヴィは、明らかにネイティブ・アメリカンのメタファーだ。そしてレアメタル発掘のためにナヴィの集落に攻撃を仕掛けるRDA社が差し向けた軍隊は、ベトナム戦争時の米軍そのままだ(実際に主人公のジェイクは米海兵隊出身という設定)。つまり本作は、潤沢な予算でCGを駆使したアメリカン・ニューシネマなのだ。RDA社はネイティブ・アメリカンの側から見た騎兵隊でもあるし、ベトナム人の側から見た米軍でもある。




でもそんな思いも、昨年公開された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観てしぼんだ。批判精神はすっかり後退している。そもそもジェームズ・キャメロンは好きな監督じゃない。『タイタニック』は僕にとってワーストにランキングされる映画の1つだ。

......洋画なら好きなことを書ける。まあでも、監督や他の作品を切り離せば、『アバター』はやはり僕にとってフェイバリットな作品だ。

231114P50_MCM_02.jpg『アバター』(2009年)
監督/ジェームズ・キャメロン
出演/サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー

<本誌2023年11月14日号掲載>



ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米韓合意の文書いまだ発表されず、潜水艦問題で難航か

ワールド

NY市長選、マムダニ氏当選でユダヤ系有権者に亀裂 

ワールド

豪11月の消費者信頼感指数、3年9カ月ぶりに100

ワールド

今年のノーベル物理学賞受賞者、HPEなどと量子スー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story