コラム

続編(とキャメロン監督)はダメでも、僕は『アバター』が好き

2023年11月21日(火)21時24分

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN

<数年前まで、「一番好きな映画は?」と質問されたときにほぼ必ず名前を挙げていたのがこの作品だ。昨年公開された続編にはがっかりしたけれど......>

前回書けよと自分でも思うけれど、前回からコラムのタイトルが変わった。私的邦画論ではなく「私的映画論」。つまり扱う題材として邦画だけでなく、洋画も含めることにした。

もちろん邦画のストックがなくなったからではない。成瀬巳喜男や山本薩夫、溝口健二や内田吐夢など、感銘を受けながらまだ取り上げていない巨匠はいくらでもいるし、今も多くの映画が現在進行形で製作されて公開されている。

サブスクに押されて映画は斜陽産業とのイメージを持つ人は多いが、昨年の映画館における邦画の公開本数は、(日本映画製作者連盟によれば)コロナ禍もあったのに634本で、1日に2本弱の新作映画が公開されていることになる。特に2005年以降は増加傾向にあり、ピークはコロナ直前の19年で邦画689本、洋画589本、合計1278本が公開されている。




(特にコロナ以降は)閉館するミニシアターも少なくない。本数は増えているがスクリーンの数は減っている。つまり公開期間が短くなっているのだ。

9月1日に東京や大阪などで公開が始まった自作『福田村事件』は当初から上映館を増やし、2カ月以上たった今もまだ上映が続いている。ミニシアター発の映画としては、かなり異例らしい。

この連載のカテゴリーに邦画だけではなく洋画も含めた理由は、実はこの自作の映画も関係している。ほかの邦画について書きづらくなったのだ。特に批判的な記述の場合は、書きながら自分も苦しくなる。

そもそも批評はできない。だってまだ監督として現役なのだ。でも感想くらいは言える。そう考えてタイトルに「私的」を付けて何とか一線を保ってきたけれど、自分の作品が公開中の今、他の映画の感想は言いづらい。知り合いの監督も多い。近すぎるのだ。だから洋画も加える。小手先ではあるが、これでずいぶん書きやすくなった。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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