コラム

生物の行動を決定づける「自由エネルギー」とは?「量子科学」と「脳科学」の融合が解き明かすこと

2026年01月14日(水)17時52分

山田氏は続けて国際比較データを示し、日本人の「不確実性回避」の傾向はトップクラスで、アメリカの倍だと指摘。日本人は特に不確実性を避けたがる国民性を持つという。

だが、不確実性を避けることで本当に幸せになれるのか。アインシュタインの言葉「チャンスは混沌の中にある」を引用し、山田氏は別の道を提案する。不定性を避けるのではなく、うまく取り入れて幸せになる方法を見つけること。そのために、ムーンショット型研究で「逆境の中で前向きに生きられる社会の実現」プロジェクトを進めている。

※前編「ムーンショット目標9」参照

「観測しすぎる」と信念が凍りつく

続いて山田氏が紹介したのが「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念だ。詩人ジョン・キーツが弟達への手紙で使った言葉で、「不確かさや謎の中にいながらも、すぐに事実や理由を求めない能力」を意味する。分からなさやまだ決まっていない感情の中にとどまれる力のことだ。

しかし現代社会は逆方向に進んでいるように映る。すぐに自己観察し、評価し、ラベリングする方向へ、私たちを強く押している。不安になるとチェックし、観測し、考え込む。自分や相手を何度も観測し直して反芻する。その結果、「自分はこういう人間だ」「相手はこういう人だ」という信念が固まって硬直してしまう。

この「観測し過ぎると状態が止まる」という現象を、量子論の「量子ゼノン効果」になぞらえて山田氏は説明した。量子ゼノン効果とは、量子系を短い間隔で何度も観測すると、状態が変化しにくくなる現象だ。頻繁に見張ると状態が変わりにくくなる、という直感的な理解ができる。

プロフィール

南 龍太

共同通信社経済部記者などを経て渡米。未来を学問する"未来学"(Futurology/Futures Studies)の普及に取り組み、2019年から国際NGO世界未来学連盟(WFSF・本部パリ)アソシエイト。2020年にWFSF日本支部創設、現・日本未来学会理事。主著に『未来学』(白水社)、『生成AIの常識』(ソシム)『AI・5G・IC業界大研究』(いずれも産学社)など、訳書に『Futures Thinking Playbook』(Amazon Services International, Inc.)。東京外国語大学卒。

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