生物の行動を決定づける「自由エネルギー」とは?「量子科学」と「脳科学」の融合が解き明かすこと
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この記事は【記事前編】「AI」と「脳科学」と「量子コンピューター」がつながる未来...応用脳科学が見据える2050年とは?の続きです
脳科学者が量子に挑む理由
【基調講演1: 理化学研究所 脳神経科学研究センター 脳型知能理論研究ユニット ユニットリーダー/京都大学 連携准教授磯村拓哉氏】
磯村氏の講演は、「なぜ脳科学に量子の発想が必要なのか」を起点に、脳の計算原理を量子の枠組みで捉え直そうとする試みであった。理論神経科学が専門で数々の実績を残す磯村氏だが、「私は量子科学の専門家とは言えない。最近、量子計算の勉強を始めたばかり」と謙虚かつ率直に告白した。研究を進める中で「量子の考え方は避けては通れない」と強く感じるようになったという。
研究の基盤にあるのは、脳が外界を理解し、未来を予測し、最適な行動を選ぶ仕組みを説明しようとする「自由エネルギー原理」。この原理では、生物は周囲の世界を「誤差の少ない形で予測できるように」内部状態を調整し続けると考える。英国の科学者カール・フリストンが提唱した理論で、生物の学習や行動は「自由エネルギー」の量を最小化するように決まる、という考え方である。
磯村氏はまず、この自由エネルギー原理が「外界の状態を推論する仕組み」と「望ましい未来を選ぶための行動選択」を同じ枠組みで捉えられる点を解説した。脳は、外界から得られる感覚入力と、その背後にある「隠れた原因」を推論する。さらに、未来に望む状態へ近づくにはどの行動が好適か、将来の「自由エネルギー」を最小化することで選択している。
つまり、認識と行動は同じ原理で説明できる。言い換えれば、脳が感覚で受け取る「現実」と、脳が作り出す「予測(モデル)」のズレ、つまり「自由エネルギー」を最小にするように常に動いているという法則だ。
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